転職を考え始めた人が最初につまずくのが「いつ動き出せばいいのか」という問題です。求人が増える時期に合わせるべきか、ボーナスをもらってからにすべきか、判断材料がないまま数か月が過ぎることも珍しくありません。この記事では、転職市場の月別の動きと、在職中・退職済み・ライフイベント前といった状況別の考え方を整理します。
結論:転職時期は「入社したい月からの逆算」と「求人が増える時期」で決める

転職時期のベストは、入社したい月から3〜6か月さかのぼった時点です。転職活動の期間は一般的に3〜6か月とされているため、希望する入社月が決まっているなら、そこから逆算した月が応募を始めるタイミングになります。加えて、求人が増える2〜3月と9〜10月に応募が重なるよう準備を進めると、選べる求人の幅が広がります。
つまり「今が何月か」だけで決めるものではありません。入社したい時期、市場の動き、自分の状況の3つを重ねて判断するものです。
転職時期を決める3つの判断軸
転職時期は、次の3つを同時に見て決めます。どれか1つだけで決めると、後から無理が出ます。
| 判断軸 | 具体的に見るもの | 決まること |
|---|---|---|
| 市場の動き | 求人が増える繁忙期(2〜3月・9〜10月)と減る閑散期 | 応募を集中させる月 |
| 入社希望月からの逆算 | 希望入社月の3〜6か月前 | 準備を始める月・応募を始める月 |
| 自分の状況 | 在職中か退職済みか、勤続年数、ボーナス、ライフイベント | 動き出してよいか、待つべきか |
迷っている段階でも情報収集は始めてよい
転職するかどうか決まっていない段階でも、求人を見たり相談したりする行動は始めて問題ありません。転職活動は「今の会社を辞める手続き」ではなく、「今の会社に残る選択肢と、外に出る選択肢を比べるための情報集め」だからです。
求人票を読む、職務経歴書を書いてみる、転職エージェントに話を聞く。この3つを進めるだけでも、自分の経験がどう評価されるのかが見えてきます。その結果「今の会社に残る」と決めても、それは判断材料をそろえたうえでの結論なので、無意味にはなりません。
転職時期で結果が変わる3つの理由

転職時期によって変わるのは、応募できる求人の数、比較できる企業の数、そして入社希望月に間に合うかどうかです。同じ経歴の人でも、動き出す月が違うだけで結果が変わることがあります。
理由1:選べる求人数が変わる
転職市場には、企業の採用活動が活発になる「繁忙期」と、求人が少なくなる「閑散期」があります。繁忙期とは、企業が新年度や下半期に向けて人員を補強するため、求人の掲載数が増える時期のことです。求人が多い時期に活動すれば、それだけ応募先の候補が増えます。
理由2:比較できないと妥協した決断になりやすい
閑散期に動き出すと、応募できる企業が限られます。候補が少ない状態では比べて選ぶことができず、条件が合いきらない企業に決めてしまいがちです。
理由3:入社希望月に間に合うかが変わる
転職活動の期間は一般的に3〜6か月とされています。応募から内定までだけでなく、内定後の退職交渉や引き継ぎにも時間がかかるためです。たとえば4月入社を目指すなら、前年の10〜11月には動き始める計算になります。「思い立ったときに始める」だけでは、入社したい月とずれてしまいます。
内定後には、退職の申し出、引き継ぎ、有給休暇の消化といった工程が残ります。応募から内定までの期間だけで計算すると、入社希望月に間に合わなくなる点に注意してください。
月別に見る転職市場カレンダー

日本の転職市場には、毎年ほぼ同じ形で繰り返される季節の波があります。求人が増える月と減る月をあらかじめ把握しておくと、準備を始めるタイミングを外しません。
求人が増える繁忙期は2〜3月と9〜10月
転職市場で求人が最も多くなるのは、2〜3月と9〜10月の2つの時期です。
2〜3月は、4月入社を見据えた採用のピークです。企業が新年度の体制に向けて人員を補強するため、幅広い業界で求人数が増えます。9〜10月は、10月入社や翌1月入社を想定した秋の採用シーズンです。上半期の業績が固まった企業が、下半期に向けて採用を強化します。
ただし繁忙期は、求人数と同時に応募者数も増えます。書類の準備を後回しにすると、求人が多いのに応募が数社で終わることがあります。
月別の市場動向と取るべき行動(一覧表)
各月のおおまかな傾向と、その月に取るとよい行動をまとめました。
| 月 | 市場の状況 | 取るべき行動 |
|---|---|---|
| 1月 | 求人が増え始めるスタート期 | 応募開始・転職エージェントへの登録 |
| 2〜3月 | 最繁忙期。求人数が最も多い | 積極的に応募・面接 |
| 4月 | 新年度スタート。求人は減少 | 入社、または次に向けた準備継続 |
| 5月 | 大型連休明け。求人がやや増加 | 応募再開・情報収集 |
| 6〜7月 | 夏採用のスタート | 応募・書類準備 |
| 8月 | 夏季休暇と重なりやや閑散 | スキルアップ・書類のブラッシュアップ |
| 9〜10月 | 秋の繁忙期。求人数が多い | 積極的に応募・面接 |
| 11月 | 求人数がやや減少 | 春の繁忙期に向けた準備 |
| 12月 | 年末で閑散期 | 職務経歴書の見直し・自己分析 |
この表は一般的な傾向です。業界や職種によって採用の山は異なるため、志望する業界の求人数の推移も併せて確認してください。
閑散期(8月・12月)は準備に使う
閑散期とは、企業の採用活動が一時的に落ち着き、求人の掲載数が減る時期のことです。8月と12月がこれにあたります。ただし「求人が少ないから何もしない」のは、時間の使い方としてもったいない選択です。
閑散期には、次の準備を進めておきます。
- 自己分析を行い、転職で実現したい条件に優先順位をつける
- 職務経歴書を作成し、実績を数字で書けるところまで仕上げる
- 転職エージェントに登録し、初回面談を済ませておく
- 志望する業界・企業の情報を集めておく
この4つが終わっていれば、繁忙期に入った直後から応募に移れます。
入社希望月から逆算する転職スケジュールの作り方
転職スケジュールは、入社したい月を先に決め、そこから3〜6か月さかのぼって応募開始月を置く形で作ります。市場の繁忙期に応募開始月が重なるよう調整できると理想的です。
逆算の基本:応募開始は希望入社月の3〜6か月前
スケジュールは次の順番で組み立てます。
- 入社したい月を1つ決める
- その3〜6か月前を応募開始月に設定する
- 応募開始月の1〜2か月前から準備(自己分析・職務経歴書の作成・転職エージェントへの登録)を始める
- 内定後の退職交渉と引き継ぎに1〜2か月程度を見込んでおく
4月入社・10月入社を狙う場合の逆算例
繁忙期に合わせる場合の目安は次のとおりです。
| 目標 | 準備開始 | 応募の中心 | 想定入社 |
|---|---|---|---|
| 4月入社を目指す | 前年の11〜12月 | 1〜3月 | 4月 |
| 10月入社を目指す | 7〜8月 | 9〜10月 | 10月または翌1月 |
前年の10〜11月に動き始めれば、4月入社に必要な3〜6か月を確保できます。逆に、2月になってから準備を始めると、書類作成に時間を取られている間に繁忙期が終わってしまうことがあります。
在職中は「準備」と「応募」を分けて進める
在職中に転職活動をする場合は、準備の工程と応募の工程を分けると無理がありません。準備(自己分析・書類作成・エージェント登録)は平日夜や休日に進められますが、面接は日中の時間を確保する必要があるためです。
面接が始まる時期には有給休暇や半休を使えるよう、あらかじめ残日数を確認しておきます。在職中の進め方で気をつける点は、「転職活動が会社にバレない5つの方法」でも解説しています。
状況別に見る転職時期の決め方
転職のベストな時期は、市場の波だけでは決まりません。在職中か退職済みか、勤続年数がどれくらいか、ライフイベントが控えているかによって、動くべきタイミングは変わります。ここでは代表的な状況ごとに考え方を整理します。
今の会社に不満はあるが辞める決断ができていない
この場合の動き出しは「今すぐ、情報収集だけ始める」です。転職するかどうかを決めてから動くのではなく、決めるために動きます。
求人を見て条件を比べる、転職エージェントに経歴を見てもらう、といった行動には退職の意思表示は必要ありません。自分の経験がどの職種・どの年収帯で評価されるのかが分かれば、「残る」「動く」のどちらを選ぶにしても、根拠のある判断ができます。
入社1〜2年目で早くも転職したい
在籍期間が短い段階での転職は、書類選考で「早期離職のリスクがある」と見られやすくなります。そのため、可能であれば1年以上在籍してから動くほうが説明はしやすくなります。
ただしこれは絶対の基準ではありません。ハラスメントを受けている、健康を損ないつつある、労働条件が求人票や労働条件通知書と大きく異なるといった場合は、在籍期間を優先する必要はありません。労働条件の明示は労働基準法第15条で使用者に義務づけられており、実際の条件が明示された内容と違う場合、労働者はその場で労働契約を解除できると定められています。心身の状態が悪化している状況で我慢を続ける判断は避けてください。
ボーナスをもらってから辞めたい
ボーナスの受給を優先するなら、支給日を過ぎてから退職の意思を伝えるのが基本です。多くの企業では、支給日に在籍していることが受給の条件になっているためです。夏の賞与は6〜7月、冬の賞与は12月に支給する企業が一般的です。
注意したいのは、支給日前に退職の意思を伝えた場合の扱いです。就業規則で「支給日に在籍している者に支給する」「退職予定者は減額する」と定めている企業もあります。賞与の支給条件は労働基準法第89条により就業規則の記載事項に含まれるため、まず自社の就業規則を確認してください。口頭で上司に伝えた時点を「退職の申し出」とみなす運用もあるため、伝える順番は慎重に決めます。
今の仕事の繁忙期が終わってから動きたい
仕事が落ち着いてから動きたい場合は、繁忙期が終わる1〜2か月前から準備を始めます。繁忙期が明けてから準備を始めると、書類が整うころには転職市場のほうが閑散期に入ってしまうことがあるためです。
具体的には、繁忙期のうちに職務経歴書を作り、転職エージェントとの面談を済ませておきます。繁忙期が明けた週から応募を始められる状態にしておくのが理想です。
すでに退職済みで早く決めたい
退職済みの場合は、収入が途切れている分だけ時間の制約が強くなります。まず、生活費が何か月分あるかを確認し、その範囲内で活動できる期間を決めます。
同時に進めるべき手続きが2つあります。1つは雇用保険の基本手当(失業保険)の手続きで、住所地を管轄するハローワークで求職の申込みを行います。もう1つは健康保険と年金の切り替えです。退職日の翌日から次の入社日までに空白がある場合、健康保険は国民健康保険への加入か、健康保険の任意継続被保険者となる方法があり、任意継続は退職日の翌日から20日以内の申請が必要です(健康保険法)。年金は国民年金の第1号被保険者への切り替え手続きを行います。
なお選考では、ブランクの長さそのものより、その期間に何をしていたかを説明できるかどうかが見られます。
結婚・出産・介護などライフイベントが控えている
ライフイベントが控えている場合は、制度の利用条件を先に確認したうえで時期を決めます。育児休業は、育児・介護休業法にもとづく制度で、有期雇用労働者を含めて一定の要件を満たせば取得できますが、労使協定により入社1年未満の労働者を対象から除外している企業があります。制度を使う予定があるなら、転職のタイミングと取得予定時期の関係を事前に確認してください。
介護が始まっている場合は、在宅勤務やフレックスタイム制など、働き方の柔軟性を求人選びの条件に組み込みます。介護休業も育児・介護休業法にもとづく制度です。市場の繁忙期よりも、制度と勤務形態の条件を優先する場面です。
お金と手続きから見た転職時期の注意点
転職時期を決めるときは、求人動向だけでなく、賞与・有給休暇・退職の申し出時期・社会保険の4点を必ず確認します。この4つは退職日の設定に直結し、後から変更しにくいためです。
ボーナスの支給条件は就業規則で確認する
賞与の支給日、支給対象者の条件、退職予定者の扱いは、企業ごとに就業規則や賃金規程で定められています。同じ「12月支給」でも、算定期間や在籍要件は企業によって異なります。退職日を決める前に、自社の規程を確認してください。
有給休暇の残日数と最終出社日を先に決める
年次有給休暇は労働基準法第39条にもとづく労働者の権利で、退職時に残っている分を消化してから退職することもできます。ただし、退職日を過ぎた分は消化できないため、残日数を確認したうえで最終出社日と退職日を設定する必要があります。引き継ぎの期間と重ならないよう、早めに上司と調整します。消化の進め方は「転職前の有給消化ガイド」で詳しく解説しています。
退職の申し出時期には法律上のルールがある
期間の定めのない雇用契約の場合、労働者は退職の申入れから2週間が経過すれば雇用契約を終了できると民法第627条第1項に定められています。一方で、就業規則に「退職の1か月前までに申し出ること」と定めている企業も多くあります。実務上は、引き継ぎと有給消化を考えると、退職希望日の1〜2か月前に申し出るのが現実的です。
伝える相手と順番も重要です。直属の上司より先に同僚に話すと、話が意図しない形で広がることがあります。退職から入社までの全体の流れは「転職・退職手続きの流れ7ステップ」にまとめています。
保険と年金の切り替えは退職日と入社日の間で決まる
退職日の翌日に次の会社へ入社するなら、健康保険と厚生年金は切れ目なく引き継がれます。1日でも空白があると、その期間は自分で国民健康保険・国民年金に加入するか、健康保険の任意継続を選ぶ必要があります。退職日と入社日を決めるときは、この空白が生じるかどうかを必ず確認してください。
転職時期の判断でよくある失敗と回避策
転職時期に関する失敗は、パターンがある程度決まっています。事前に知っておけば避けられるものがほとんどです。
| よくある失敗 | 何が起きるか | 回避策 |
|---|---|---|
| 「落ち着いたら動く」と先送りする | 準備が始まらないまま繁忙期を逃す | 応募開始月をカレンダーに書き込み、準備を先に始める |
| 退職してから活動を始める | 収入がない状態で焦り、条件を妥協する | 在職中に情報収集と書類作成を終えておく |
| 繁忙期に合わせただけで準備が間に合わない | 求人は多いのに応募が数社で終わる | 繁忙期の1〜2か月前に書類を完成させる |
| 賞与や有給を確認せずに退職日を決める | 受け取れるはずのものを取り逃す | 就業規則と残日数を確認してから退職日を設定する |
| 入社希望月を決めずに応募する | 内定が出ても入社日が調整できない | 先に入社したい月を決め、逆算する |
もっとも多いのは1つ目の先送りです。「時期が来たら動く」ではなく、「この月に応募を始める」と日付で決めることが、時期選びで失敗しないための最大のポイントです。時期の見極め方をさらに詳しく知りたい場合は、「転職のベストタイミング7選」も併せて確認してください。
転職時期に迷ったら、無料のキャリア相談で整理する
自分にとっての適切な転職時期は、経歴・年齢・家庭の状況・志望する業界によって変わります。市場の繁忙期に合わせるべき人もいれば、制度や条件を優先して時期をずらすべき人もいます。判断に迷う場合は、第三者に状況を整理してもらうのが近道です。
UNLITD CAREERを運営する株式会社アンリット(有料職業紹介事業 許可番号 13-ユ-319937)では、無料の転職相談を受け付けています。転職するかどうかを決めていない段階の相談も可能です。今の経験でどのような選択肢があるのか、いつ動き出すのが現実的かを一緒に整理します。動き出す時期を決めかねている方は、一度ご相談ください。
まとめ:転職時期は市場・逆算・自分の状況の3点で決める
転職時期は、次の3点を重ねて決めます。
- 市場の動き:求人が増えるのは2〜3月と9〜10月。8月と12月は閑散期で、準備に充てる
- 入社希望月からの逆算:応募開始は希望入社月の3〜6か月前。準備はさらに1〜2か月前から
- 自分の状況:勤続年数、賞与の支給日、有給の残日数、ライフイベントの予定
この3点のうち、自分でコントロールできるのは「逆算」と「準備」です。市場の繁忙期は動かせませんが、その時期に応募できる状態を作っておくことはできます。まずは入社したい月を1つ決め、そこから逆算した応募開始月をカレンダーに書き込むところから始めてください。
転職時期に関するよくある質問
転職時期はいつがベストですか?
入社したい月の3〜6か月前が、応募を始めるベストな時期です。加えて、求人が増える2〜3月と9〜10月に応募が重なるよう準備を進めると、選べる求人の幅が広がります。
転職の繁忙期と閑散期はいつですか?
転職市場の繁忙期は2〜3月と9〜10月、閑散期は8月と12月が一般的です。2〜3月は4月入社に向けた採用、9〜10月は10月・翌1月入社に向けた採用が中心になります。
4月入社を目指す場合、いつから活動を始めればよいですか?
前年の10〜11月には動き始めるのが目安です。転職活動には一般的に3〜6か月かかり、内定後の退職交渉と引き継ぎにもさらに時間が必要になるためです。準備(自己分析・職務経歴書の作成・転職エージェントへの登録)は前年の11〜12月までに終えておきます。
ボーナスをもらってから転職するにはどうすればよいですか?
賞与の支給日を過ぎてから退職の意思を伝えるのが基本です。多くの企業では支給日に在籍していることが受給条件になっています。ただし、退職予定者を減額対象とする規程を持つ企業もあるため、就業規則の賞与に関する定めを事前に確認してください。
入社1年未満で転職するのは不利ですか?
在籍期間が短いと、書類選考で早期離職を懸念されることがあります。そのため可能であれば1年以上在籍してから動くほうが説明はしやすくなります。ただし、ハラスメントや健康被害、労働条件が明示された内容と異なる場合は、在籍期間を優先する必要はありません。
在職中と退職後、どちらで転職活動をすべきですか?
収入が続く在職中のほうが、条件を比べて落ち着いて選べます。退職後は時間を確保しやすい一方で、収入が途切れるため決断を急ぎやすくなります。特別な事情がなければ、在職中に情報収集と書類作成を終えてから動くのが安全です。
退職はいつまでに会社へ伝えればよいですか?
期間の定めのない雇用契約であれば、民法第627条第1項により、申入れから2週間の経過で契約は終了します。ただし就業規則で1か月前までの申し出を求めている企業も多く、引き継ぎと有給消化を考えると、退職希望日の1〜2か月前に伝えるのが現実的です。
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