「仕事を辞めたい」と感じたときに最初にやるべきことは、辞めるかどうかを決めることではありません。辞めたい理由を一つずつ書き出し、転職で解決できる問題と、転職しても変わらない問題に分けることです。理由が整理されないまま退職を決めると、次の職場で同じ不満を繰り返しやすくなります。
この記事では、辞めたい原因の分類、辞める前の確認事項、辞める以外の選択肢、転職を決めた場合の手順までを順番に解説します。法律や公的制度に関わる部分は、根拠となる法律名と機関名を示しています。
「仕事を辞めたい」と感じたときに最初にやること

最初にやることは、辞めたい理由を書き出して分類することと、今すぐ環境から離れるべき状況かを判定することの2つです。これを飛ばして求人を探し始めると、応募先を選ぶ基準がないまま活動することになります。
辞めたい理由を「事実」と「感情」に分けて書き出す
辞めたい理由をすべて書き出し、各項目を「事実」と「感情」に分けます。事実とは、残業時間、給与額、担当業務の内容など記録や数字で確認できる情報です。事実として書ける項目は他社の求人と比較できるため、転職で改善するかを判断しやすくなります。
次に、それぞれの項目へ「転職で変わる」「異動や配置換えで変わる」「転職しても変わらない可能性がある」の3つのラベルを付けてください。ラベルの分布を見れば、自分にとって転職が有効な手段かどうかがおおよそ判断できます。
今すぐ環境から離れるべき状況かを先に判定する
心身の健康が損なわれている場合や、違法な労働条件が疑われる場合は、じっくり考えるより先に相談・休養を優先してください。判断力が落ちた状態では、条件を妥協しやすくなります。
長時間労働には公的な目安があります。厚生労働省の脳・心臓疾患の労災認定基準では、発症前2〜6か月間にわたり1か月あたりおおむね80時間を超える時間外労働があった場合、業務と発症との関連性が強いと評価されます。時間外労働の上限は労働基準法第36条で規制されており、労使協定を結んでいても上限を超える労働は認められません。
状況ごとの優先行動は次のとおりです。
- 残業が常態的に長く、休日も取れない:勤務時間の記録を残し、都道府県労働局の総合労働相談コーナーに相談する
- ハラスメントを受けている:やり取りと日時を記録し、社内相談窓口または総合労働相談コーナーに相談する
- 眠れない、食欲がない状態が続いている:産業医や医療機関、厚生労働省の相談窓口「こころの耳」に相談する
- 不満はあるが健康状態は保てている:原因の整理と情報収集から始める
心身の不調は自己判断で放置しないでください。体調の評価や治療の要否を判断できるのは医療者です。
仕事を辞めたいと感じる主な原因5つ

仕事を辞めたいと感じる原因は、大きく「人間関係」「給与・待遇」「仕事内容」「労働環境」「将来への不安」の5つに分けられます。自分の理由がどれに当てはまるかを特定すると、転職で解決できるかの見通しが立ちます。
原因1:職場の人間関係のストレス
職場の人間関係の問題には、ハラスメント、価値観の違い、チーム内の対立などが含まれます。転職で環境ごと変えられる一方、新しい職場でも同種の問題が起こり得ます。「今の人間関係が嫌だ」で止めず、「どういうコミュニケーションの職場なら働けるか」まで言語化すると、応募先を選ぶ基準になります。
なお職場のパワーハラスメントについては、労働施策総合推進法により事業主に防止の措置義務が定められています。社内の相談窓口の有無をまず確認してください。
原因2:給与・待遇への不満
給与・待遇への不満とは、労働の内容に対して報酬や制度が見合っていないと感じる状態です。この原因は、比較すれば客観的に検証できる点が特徴です。同じ職種・同じ経験年数の求人を複数見れば、自分の給与が相場のどの位置にあるかがわかります。相場より低ければ転職は有効な手段になり、相場どおりであれば問題は給与額ではなく評価のされ方や仕事量にある可能性があります。
なお、残業代の不払いや有給休暇を与えないことは労働基準法に違反する場合があり、労働基準監督署に相談できます。
原因3:仕事内容にやりがいを感じられない
やりがいの欠如とは、担当業務に意味や成長を感じられない状態で、同じ作業の繰り返し、希望と異なる配属、裁量のなさなどが背景にあります。切り分けたいのは、原因が「仕事内容そのもの」か「その仕事を取り巻く環境」かです。仕事内容には納得しているが評価制度や人間関係が合わないのであれば、同じ職種で会社を変える転職が有効です。仕事内容自体が合わない場合は職種を変える必要があり、準備期間も長くなります。
原因4:労働時間・職場環境の悪さ
労働時間や職場環境の問題とは、長時間労働、過大なノルマ、通勤負担など、個人の努力では変えにくい構造的な要因です。会社の体質に根ざしていることが多く、転職が根本的な解決になりやすい領域です。「周囲も同じだから普通だ」と考えがちですが、労働時間には労働基準法上の規制があります。まずは勤務実態を記録に残してください。
原因5:キャリアと将来への不安
将来への不安とは、今の会社に居続けた場合に自分の市場価値やキャリアが伸びないと感じる状態です。業界の先行き、会社の業績、スキルを伸ばす機会の有無などが判断材料になります。この理由による転職は「習得したいスキルや任されたい役割が明確にある」と語れるため、面接でも説明しやすくなります。ただし抽象的な不安のままでは求人を選べません。
衝動的に辞める前に確認したい5つのこと

退職を決める前に確認したいのは、感情の性質、社内での解決可能性、生活資金、市場価値、転職後の目標の5点です。未確認のまま辞めると、活動が長引いたときに条件を妥協しやすくなります。
確認1:一時的な感情か、続いている不満か
叱責を受けた直後や大きなミスの翌日は、判断が感情に引きずられやすい時期です。辞めたいと感じた日から一定期間、その気持ちが続くかを観察してください。数日で薄れるなら出来事への反応である可能性があります。朝起きるたびに職場へ行きたくない状態が数か月続くなら、環境と自分が合っていないサインです。
確認2:転職以外で解決できる原因か
辞めたい原因が、社内の異動・業務分担の変更・上司との面談で改善できるものかを確認します。特定の上司との関係が問題なら異動で解決する可能性があり、業務量が問題なら分担の見直しを申し出る余地があります。社内で解決できる問題を転職で解決しようとすると、転職先でも同じ問題に直面します。
確認3:生活費と貯蓄はどれだけあるか
退職後に活動する場合、内定が出るまで収入がありません。転職活動には数か月かかることが一般的で、その間の生活費を確保できるかが判断材料になります。さらに退職後は健康保険や年金の切り替えが必要になり、会社が負担していた分の保険料が自己負担になります。
確認4:自分のスキルは市場でどう評価されるか
市場価値とは、自分の経験やスキルが他社の求人でどの程度の条件で採用され得るかという評価です。求人サイトで同職種・同年代の募集要件と給与レンジを見るだけでも、おおよその位置がつかめます。
転職エージェントとは、求人紹介から書類添削、面接対策、条件交渉までを担当者が支援するサービスで、求職者は無料で利用できます。相談すれば、実際の選考事例をもとにした評価を聞けます。得意な業界や年代はサービスごとに異なるため、選び方は「転職エージェントおすすめ7選」を参考にしてください。
確認5:転職して何を実現したいか
「今の会社を辞めたい」だけでは応募先を絞り込めません。「年収を上げたい」「週に数日は在宅で働きたい」など、実現したい状態を具体的な言葉にしてください。目標が定まると求人の取捨選択が速くなり、志望動機にも一貫性が生まれます。目標が曖昧なままだと、内定が出た会社に流されて決めてしまいがちです。
辞める以外の選択肢と、心身がつらいときの相談先

辞める以外の選択肢には、社内での異動、労働条件の改善要求、休職があります。心身の不調を感じている場合は、転職活動より先に産業医や公的な相談窓口に相談してください。
社内で試せる3つの選択肢
社内で試せる主な選択肢は次の3つです。
- 異動・配置換えの希望を出す:上司や人事に希望を伝える。人間関係や業務内容が原因の場合に有効な手段です。
- 労働条件の改善を求める:残業時間、業務量、勤務形態を具体的な数字で相談する。曖昧な訴えより、記録に基づく相談のほうが動いてもらいやすくなります。
- 休職を検討する:休職は法律で一律に定められた制度ではなく、会社の就業規則で内容が決まります。取得できるか、期間はどれくらいか、給与の扱いはどうなるかを就業規則で確認してください。
なお年次有給休暇は労働基準法第39条に基づく労働者の権利です。まとまった休みを取って距離を置くだけでも、判断の材料が変わることがあります。
社外の相談窓口を使う
社内で相談しにくい場合は、公的な窓口を利用できます。主な窓口は次のとおりです。
| 窓口 | 相談できる内容 |
|---|---|
| 総合労働相談コーナー(都道府県労働局) | 労働条件、ハラスメント、退職をめぐるトラブル全般 |
| 労働基準監督署 | 残業代の不払い、労働時間や休暇など労働基準法違反の疑い |
| 産業医・保健師(社内) | 働き方と健康に関する相談。長時間労働時の面接指導 |
| こころの耳(厚生労働省) | 働く人のメンタルヘルスに関する相談 |
眠れない、食欲がない、気分の落ち込みが続くといった状態が長引いている場合、それが一時的な疲れか治療が必要な状態かを判断できるのは医療者です。自己判断で我慢を続けず、産業医や医療機関に相談してください。
転職を決断してから退職までの5ステップ

転職すると決めた後の流れは、自己分析、転職の軸の設定、情報収集、応募書類と面接対策、内定後の条件確認と退職手続きの5ステップです。順に進めれば応募先の基準が固まり、選考中の判断もぶれにくくなります。
ステップ1:自己分析で判断基準を作る
自己分析とは、これまでの経験・強み・価値観を整理し、自分が仕事に何を求めているかを言葉にする作業です。次の問いから始めます。
- 成果を出せたと感じた場面はどこか
- 得意なこと、苦手なことは何か
- どんな働き方が合っているか(チーム中心か、個人作業中心か)
- 5年後にどんな役割を担っていたいか
自己分析が不十分なまま応募を始めると、志望動機が抽象的になり説得力を欠きます。進め方は「転職成功に必須!自己分析のやり方7ステップ」で詳しく解説しています。
ステップ2:転職の軸を2〜3つに絞る
転職の軸とは、求人を選ぶときの優先順位のことです。給与・仕事内容・職場環境・勤務地や働き方・成長機会などの要素を並べ、絶対に譲れない条件を2〜3つに絞ります。条件を増やすほど該当する求人が減るためです。「譲れない条件」と「叶えば嬉しい条件」を分けておくと、内定を比較する基準にもなります。
ステップ3:情報収集と求人探しを始める
求人情報の集め方は主に次の4つです。
| 方法 | 特徴 |
|---|---|
| 転職サイト | 求人を自分で検索・応募する。求人数が多く、自分のペースで進められる |
| 転職エージェント | 担当者が求人紹介・書類添削・面接対策・条件交渉まで支援する。求職者は無料 |
| 企業の採用ページ | 企業が直接掲載する情報を確認できる |
| 知人・元同僚への相談 | 実際に働く人から職場の様子を聞ける |
初めての転職では、サイトで市場を把握しつつエージェントで書類と面接の準備を進める併用が現実的です。
ステップ4:応募書類の作成と面接対策
転職活動で必要な書類は、履歴書と職務経歴書の2種類です。職務経歴書では担当業務の羅列ではなく、何をどう改善したかを、示せる場合は数字を使って書きます。
面接では、転職理由、自己PR、志望動機、今後のキャリアについて聞かれるのが一般的です。退職理由は不満をそのまま述べず、「次の職場で何をしたいか」に接続して説明してください。
ステップ5:内定後の条件確認と退職手続き
内定が出たら、労働条件通知書や雇用契約書で条件を確認します。給与、みなし残業の有無と時間数、勤務地、勤務時間、試用期間が求人票や面接での説明と一致しているかを照合し、相違があれば承諾前に確認してください。
退職の申し出時期には法律上の定めがあります。期間の定めのない雇用契約の場合、民法第627条第1項により、労働者が解約を申し入れてから2週間の経過で契約は終了します。ただし多くの会社は就業規則で1〜2か月前までの申し出を定めているため、引き継ぎを含めて余裕をもって伝えるのが現実的です。退職日までの流れや必要書類は「転職・退職手続きの流れ7ステップ」で確認できます。
在職中に転職活動をするか、辞めてから動くか
転職活動は、原則として在職中に進めることをおすすめします。収入が途切れないため、条件を妥協せずに選べるからです。ただし心身の健康が損なわれている場合や、違法な労働環境から離れる必要がある場合は、退職を優先する判断もあります。
| 比較項目 | 在職中に活動 | 退職してから活動 |
|---|---|---|
| 収入 | 継続する | 途切れる。生活費の備えが必要 |
| 使える時間 | 限られる。日程調整が難しい | 確保しやすい |
| 精神的な余裕 | 収入面の不安が小さい | 期間が延びるほど焦りやすい |
| 社会保険 | 変更なし | 健康保険・年金の切り替えが必要 |
| 条件交渉 | 断る選択肢があり交渉しやすい | 早く決めたい気持ちが働きやすい |
在職中に活動する場合の進め方
在職中は時間の確保が課題になります。応募社数を絞り、面接の候補日を複数用意しておくと調整しやすくなります。現職に知られたくない場合の注意点は「転職活動が会社にバレない5つの方法」で解説しています。
退職してから活動する場合に確認すること
退職してから活動する場合は、事前に次の3点を確認してください。
- 生活費:活動期間中の固定費をまかなえる貯蓄があるか
- 健康保険:任意継続、国民健康保険への加入、家族の被扶養者になるという選択肢があり、手続き先と保険料が異なります。健康保険組合や協会けんぽ、市区町村の窓口で確認してください
- 年金:厚生年金から国民年金への切り替えを市区町村の窓口で手続きします
失業給付(基本手当)は、雇用保険の被保険者期間や離職理由によって受給条件と時期が変わります。給付制限の扱いは制度改正で変わることがあるため、居住地のハローワークで最新の条件を確認してください。
転職で後悔しないための3つのポイント
転職で後悔しないために重要なのは、目的を言語化すること、企業研究を複数の情報源で行うこと、焦って決めないことの3点です。後悔の多くは、いずれかが欠けた状態で決断したときに起きます。
「なんとなく転職」を避ける
目的が不明確なまま転職すると、新しい職場でも同じ不満に直面しやすくなります。「現職を辞めたい理由」と「転職先に求めること」を書き出し、両者が対応しているかを確認してください。辞めたい理由が異動や働き方の変更で解決するなら、転職以外の手段を先に試す選択肢も残ります。
企業研究を複数の情報源で行う
求人票と面接の印象だけで決めると、入社後に認識の違いが生じやすくなります。確認したい項目は次の5つです。
- 事業内容と業績の推移
- 平均勤続年数や離職の状況
- 残業時間の実態と有給取得状況
- 社員の口コミ(複数サイトを見る)
- 会社の方針が自分の価値観と合うか
口コミは投稿者の立場や在籍時期によって内容が偏ります。求人票、企業の公開情報、面接での質問、口コミを組み合わせて判断してください。面接で「配属予定チームの残業時間の実績」を質問すれば、具体的な情報を得られます。
焦って内定を承諾しない
早く現職を離れたい気持ちがあると、条件を十分に確認しないまま承諾してしまうことがあります。承諾前に労働条件を書面で確認してください。複数の内定がある場合は、給与だけでなく業務内容、勤務時間、通勤時間、成長機会を並べて比較します。迷うときは転職エージェントの担当者や信頼できる第三者に相談すると、抜けている観点に気づけます。
まとめ|「辞めたい」と「辞めるべき」は分けて考える
「辞めたい」という気持ちと「辞めるべきかどうか」の判断は、別のものとして扱ってください。要点は次の5つです。
- 辞めたい理由を事実と感情に分け、転職で変わる問題かを見極める
- 心身の不調や違法な労働条件が疑われる場合は、判断より先に相談・休養を優先する
- 異動や労働条件の相談など、辞める以外の選択肢を先に検討する
- 在職中に活動すれば収入が途切れず、条件を妥協せずに選べる
- 転職して実現したいことを言葉にできて初めて、応募先を絞り込める
整理がついてから動いても遅くはありません。順番を守ることが後悔を減らす近道です。
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仕事を辞めたいときのよくある質問
辞めたい気持ちがどのくらい続いたら転職を考えるべきですか
明確な基準はありませんが、数日で薄れるなら特定の出来事への反応である可能性が高く、数か月続くなら環境と自分が合っていないサインとして扱う価値があります。ただし体調に影響が出ている場合は、期間にかかわらず産業医や医療機関に相談してください。
次が決まっていない状態で辞めてもよいですか
原則として、在職中に内定を得てから退職するほうが安全です。収入が途切れず、条件を妥協せずに選べるためです。ただし心身の健康が損なわれている場合などは退職を優先する判断もあります。その場合は生活費、健康保険の切り替え、年金、失業給付の条件を事前に確認してください。
退職はいつまでに伝える必要がありますか
期間の定めのない雇用契約であれば、民法第627条第1項により、解約の申し入れから2週間の経過で契約は終了します。ただし多くの会社は就業規則で1〜2か月前までの申し出を求めており、引き継ぎや有給消化を考えると規則に沿って早めに伝えるのが現実的です。
上司に強く引き止められて辞められないときはどうすればよいですか
期間の定めのない雇用契約では、退職に会社の同意は必要ありません。民法第627条第1項により、申し入れから2週間で契約は終了します。退職の意思は退職届など記録の残る形で伝え、受け付けてもらえない場合は都道府県労働局の総合労働相談コーナーに相談してください。
有給休暇は退職前にすべて使えますか
年次有給休暇は労働基準法第39条に基づく労働者の権利で、退職前に取得できます。ただし残日数や引き継ぎの都合で、希望どおりに全日程を取得できないこともあります。退職日と最終出社日を決める段階で、残日数と取得スケジュールを会社と調整してください。
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