転職で年収を上げるには、自分の年収相場を調べ、複数社の選考を並行して進め、内定後・承諾前に根拠を示して交渉することが基本です。年収は今の会社の給与額ではなく、応募先の企業があなたの経験にいくら払うかで決まります。交渉しなければ、最初の提示額がそのまま年収になります。
厚生労働省「雇用動向調査」では、転職した人のうち賃金が増えた人と減った人の割合が毎年公表されています。増えた人が3〜4割、減った人が約3割で、年によって変動します(要確認:最新年の数値)。転職すれば必ず年収が上がるわけではなく、進め方で結果が分かれるというのが公的統計が示す実態です。
この記事では、年収が上がる人と上がらない人の違い、年収を上げる7つの方法、年収が上がりやすい業界・職種の特徴、そして年収を下げないための注意点を順に解説します。
転職で年収が上がる人・上がらない人の違い

転職で年収が上がる人は、自分の市場価値と年収相場を数字で把握し、複数社を並行して受け、内定後に交渉しています。上がらない人は、相場を調べず、1社ずつ受け、提示額をそのまま受け入れています。転職回数や転職そのものは年収を上げる要因ではなく、進め方の違いが結果を分けます。
市場価値とは、あなたの経験やスキルに対して、採用する企業側が支払ってもよいと考える金額の水準です。現職の給与とは別に決まります。
| 観点 | 年収が上がる人 | 年収が上がらない人 |
|---|---|---|
| 市場価値 | 職種・経験年数別の相場を調べて把握している | 自分のスキルを過小評価している、または調べていない |
| 応募の仕方 | 複数社に同時応募し、比較と交渉の材料にする | 1社ずつ受け、断られたら次を探す |
| 転職エージェント | 相場情報の収集と年収交渉に使う | 使わず、情報収集も交渉も自力で行う |
| 実績の伝え方 | 「売上前年比〇%」のように数字で示す | 「貢献した」「頑張った」と抽象的に伝える |
| 年収交渉 | 内定後・承諾前に根拠つきで行う | 交渉しない、または一度断られて諦める |
| 業界・職種の選び方 | 年収水準の高い業界・職種を候補に入れる | 現職と同じ業界・職種にしか応募しない |
年収が上がる人の共通点
年収が上がる人に共通するのは、「相場を知っている」「交渉材料を持っている」「実績を数字で語れる」の3点です。この3点がそろうと、企業の提示額に対して「相場と実績から見て〇〇万円が妥当です」と根拠を示せます。
相場を知るために転職サイトや公的統計を使い、交渉材料を持つために複数社に同時応募し、実績を語るために日々の成果を記録しています。転職エージェントは、この3点を補うための手段として使っています。
年収が上がらない人の共通点
年収が上がらない人に典型的なのは、「とにかく転職すれば何とかなる」と戦略なしに活動を始めること、提示額をそのまま受け入れること、自分のスキルを過小評価することです。現職と同じ業界・職種にしか応募しない場合も、年収水準が変わらないため大きな上昇は見込めません。
転職回数が多いだけでは年収は上がりません。「転職すること」自体が目的になると、条件の悪い転職を繰り返し、経歴が不安定になります。「なぜ転職するのか」「どの方向に進みたいのか」を先に決めてから活動を始めてください。
転職で年収を上げる7つの方法

転職で年収を上げる方法は、次の7つです。1〜2は活動前の準備、3〜5は選考中の進め方、6〜7は応募先の選び方と伝え方の工夫にあたります。
- 需要の高いスキルを転職活動の3〜6か月前から身につける
- 職種・業界の年収相場を3つ以上の情報源で調べる
- 複数社に同時応募して交渉材料を持つ
- 転職エージェントに年収交渉を任せる
- 年収交渉は「内定後・承諾前」に根拠つきで行う
- 年収水準の高い業界・職種を候補に入れる
- 実績を数字で示す
1. 需要の高いスキルを転職活動の3〜6か月前から身につける
年収を上げる転職の土台は、企業の需要が高いスキルを持っていることです。転職活動を始めてから学び始めても選考に間に合わないため、活動開始の3〜6か月前から着手します。
企業からの需要が高いとされる分野の例は次のとおりです。
- IT全般: プログラミング(Python、Javaなど)、クラウド(AWS、Azure)、セキュリティ
- データ分析・AI活用: 機械学習、データ分析、生成AIツールの業務活用
- デジタルマーケティング: SEO、SNS運用、Web広告、コンテンツ制作
- プロジェクトマネジメント: PMP資格、アジャイル開発の経験
- 語学: 実務で使える英語・中国語
- 財務・会計: 簿記、FP、財務分析
今の職種の経験に「AIツールを業務で使える」という要素を掛け合わせると、同じ職種の応募者の中で差別化しやすくなります。学習はUdemyやCourseraなどのオンライン講座で始められます。転職のために新しいスキルをゼロから取るより、今の職種で評価される周辺スキルを足す方が、短期間で提示額に反映されやすい点も覚えておいてください。
2. 職種・業界の年収相場を3つ以上の情報源で調べる
年収相場とは、同じ職種・経験年数・地域の人が実際に受け取っている年収の目安です。1つの情報源では偏りが出るため、3つ以上を組み合わせて、自分に近い条件の数字を把握します。
| 情報源 | 分かること | 使い方 |
|---|---|---|
| 公的統計(厚生労働省「賃金構造基本統計調査」、国税庁「民間給与実態統計調査」) | 職種・年齢・企業規模・業種別の賃金水準 | 全体の水準を把握する基準にする |
| 転職サイトの年収データ・診断(doda、リクナビNEXT、マイナビ転職など) | 職種・業界別の年収の目安 | 自分の条件を入力して目安を出す |
| 転職エージェント | 直近の求人での提示額の傾向 | 面談で「自分の経験なら提示額はいくらか」を聞く |
| 口コミサイト(OpenWork、Glassdoorなど) | 企業ごとの給与の実例 | 応募先企業の水準を確認する |
| 求人票(LinkedInを含む) | 募集時の年収レンジ | 同職種の求人を複数見て幅をつかむ |
年収は経験年数、企業規模、勤務地で大きく変わります。平均値ではなく、自分と条件が近い事例を選んでください。相場が分かると、内定時に「同職種の相場は〇〇万円のため、〇〇万円でご検討いただけないか」と根拠を持って交渉できます。
3. 複数社に同時応募して交渉材料を持つ
複数社の選考を同時に進めると、他社の内定が交渉材料になり、各社の提示額を比較できます。1社だけに応募すると、断られたくない心理が働き、提示額をそのまま受け入れやすくなります。
同時応募には次の利点があります。
- 「他社から〇〇万円の提示を受けている」と伝えられ、交渉の根拠になる
- 「この1社に決めなければならない」という焦りが無くなる
- 複数社の評価を比べることで、自分の市場価値が客観的に分かる
- 年収だけでなく、福利厚生・働き方・社風も比較して選べる
同時に進める数は5〜10社程度を目安にしてください(編集部の目安)。少ないと比較できず、多すぎると1社ごとの準備の質が下がります。「本命3社・準本命3〜4社・練習2〜3社」のように優先度を付けて管理すると、選考の負担を抑えられます。
会社名、応募日、選考状況、提示年収を一覧にした応募管理表をスプレッドシートで作っておくと、交渉のタイミングを逃しにくくなります。
4. 転職エージェントに年収交渉を任せる
転職エージェントは、求職者側は無料で利用でき、年収交渉を代行してくれます。自分では言い出しにくい金額の話を、企業の採用担当者と日常的にやり取りしている担当者が伝えるため、企業との関係を損ねにくいのが利点です。
無料で使える根拠は法律にあります。有料職業紹介事業者は、求職者から手数料を受け取ることが職業安定法第32条の3第2項で原則として禁止されています(例外は芸能家など一部の職業のみ)。費用は採用する企業が負担する仕組みです。
転職エージェントに依頼できることは次のとおりです。
- 転職サイトに掲載されていない非公開求人の紹介
- 年収交渉の代行
- 求人票に書かれていない職場環境や選考の傾向の共有
- 履歴書・職務経歴書の添削
- 面接対策
一方で、注意点もあります。
- 担当者によって知識や対応の質に差がある
- 紹介料は採用企業が支払うため、担当者によっては決断を急かされることがある
- 希望と異なる求人を勧められることがある
総合型(リクルートエージェント、doda、マイナビエージェントなど)と専門特化型(IT、外資系、管理職など)を組み合わせ、2〜3社に登録して担当者と求人の質を比べる使い方が合理的です。各社の違いは「転職エージェントおすすめ7選失敗しない選び方と活用法完全ガイド」で解説しています。
5. 年収交渉は「内定後・承諾前」に根拠つきで行う
年収交渉に適した時期は、内定の連絡を受けてから承諾するまでの間です。企業がすでに採用を決めていて、かつ条件がまだ確定していないためです。
| 時期 | 交渉の可否 | 理由 |
|---|---|---|
| 書類選考中・一次面接 | 避ける | 評価が定まっておらず、条件面を先に出すと印象を下げる |
| 最終面接で実績を十分に伝えた後 | 可能 | 企業があなたの価値を高く評価している |
| 内定通知の直後 | 最適 | 企業の採用意欲が最も高く、条件を詰める段階にある |
| 他社の内定を持っているとき | 最適 | 他社の提示額を根拠にできる |
| 内定承諾後 | 避ける | 条件に合意した後の変更は信頼を損ねる |
伝え方は「もっと欲しい」ではなく、「相場」と「実績」を根拠にします。例文は次のとおりです。
「内定のご連絡をいただき、ありがとうございます。提示いただいた年収について、一点ご相談があります。同様の経験・スキルを持つ人材の相場は〇〇万円から〇〇万円と伺っております。私のこれまでの実績(具体的な数字)を踏まえ、〇〇万円でご検討いただけないでしょうか。」
一度断られても、基本給ではなく賞与や手当、入社後の評価時期など別の条件で歩み寄れることがあります。交渉の進め方は「転職時の給与交渉タイミングと成功する5つのコツ」で詳しく解説しています。
6. 年収水準の高い業界・職種を候補に入れる
同じスキルでも、業界の利益率や人材の希少性によって年収水準は変わります。年収を大きく上げたいなら、業界・職種の選び方を戦略に入れます。
経験を活かせる組み合わせは、「異業種×同職種」か「同業種×異職種」です。職種の経験がそのまま評価されるため、年収が上がりやすい転職になります。業界も職種も変える「異業種×異職種」は未経験者として扱われ、一時的に年収が下がることがあります。
大幅な年収アップを狙うなら、まず同じ職種で年収水準の高い業界に移る選択肢から検討してください。業界・職種の見分け方は、次の章で説明します。
7. 実績を数字で示す
採用担当者が「年収を上げてでも採用したい」と判断する材料は、数字で示された実績です。抽象的な自己PRは評価の根拠にならず、提示額に反映されません。
- 数値化なし: 「営業として売上向上に貢献しました」
- 数値化あり(例): 「入社2年目に担当エリアの売上を前年比125%に伸ばし、営業職200名の中で上位10位に入りました」
数値化できる項目の例は次のとおりです。
| 分野 | 数字にできる項目 |
|---|---|
| 売上・収益 | 売上金額、目標達成率、前年比、社内順位 |
| コスト削減 | 削減額、削減率、改善前後の比較 |
| 業務効率化 | 作業時間の短縮率、処理件数の増加、エラー率の改善 |
| マネジメント | 部下の人数、採用した人数、チームの目標達成率 |
| プロジェクト | 予算規模、関係者数、納期の達成率 |
今日から「実績ノート」を作り、業務で達成したことを数字と一緒に記録してください。「大したことではない」と感じる成果も、数字を添えると説得力が出ます。書き方は「職務経歴書の書き方完全ガイド」を参考にしてください。
年収が上がりやすい業界・職種の特徴

年収が上がりやすいのは、市場が成長していて、専門知識が必要で、利益率が高い業界の中で、成果が数字で見える職種です。特定の業界名を順位付けするより、この条件で応募先を見る方が判断を誤りません。
年収水準が高くなりやすい業界には、次の特徴があります。
- 市場規模が大きく、成長を続けている
- 専門知識やスキルが必要で、参入障壁が高い
- 利益率が高く、人件費に余裕がある
- 海外を含めて事業を展開している
年収が上がりやすい職種には、次の特徴があります。
- 希少性の高いスキルが求められる
- 成果を数字で示しやすい(営業、マーケティング、エンジニアなど)
- 管理職・マネジメント職へのキャリアパスが明確である
- 会社が変わっても通用するスキルが身につく
例として、IT・テクノロジー業界のエンジニアやデータサイエンティストは、IT人材の不足を背景に、AI・機械学習、クラウド、セキュリティの分野で需要が高い職種です。具体的な年収水準は、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」や求人票で、自分の経験年数に近い数字を確認してください。
転職で年収を下げないための注意点

年収を下げない鍵は、提示額を「総額」ではなく内訳で確認することと、求人票の年収と内定時の条件の差を書面で確かめることです。上げることだけに目が向くと、総額は上がっても基本給が下がる、賞与が想定どおり出ない、といった失敗が起きます。
年収の内訳(基本給・賞与・固定残業代)を確認する
提示された年収に賞与や固定残業代がどれだけ含まれているかで、毎月の手取りと収入の安定性は大きく変わります。総額が同じでも、内訳によって実質的な価値は異なります。
- 基本給: 残業代や賞与の計算の基礎になる。基本給が低いと、総額が同じでも不利になる
- 賞与: 業績連動の場合は想定どおり支給されないことがある。「年収〇〇万円(賞与含む)」の賞与額が前年実績か、見込みかを確認する
- 固定残業代(みなし残業代)とは、あらかじめ一定時間分の残業代を給与に含める制度です。何時間分が含まれ、超えた分は別途支払われるかを確認する
- 昇給・評価制度: 入社時の額だけでなく、評価の時期と昇給の仕組みを確認する
求人票の年収と内定時の提示額が違うときの確認方法
企業は、募集時に示した労働条件(賃金を含む)を変更して労働契約を結ぶ場合、変更内容を求職者に明示する義務があります(職業安定法第5条の3第3項)。また、採用時には賃金などの労働条件を書面で明示する義務があります(労働基準法第15条)。
口頭の提示額だけで内定を承諾せず、労働条件通知書または雇用契約書で、基本給・賞与・固定残業代・勤務地・勤務時間を確認してください。求人票と差がある場合は、その理由を採用担当者かエージェントに確認したうえで判断します。
「異業種×異職種」への転職は一時的に年収が下がる場合がある
業界も職種も変える転職は未経験者として扱われ、提示額が現職より下がることがあります。年収を維持したい場合は、同じ職種で業界を変えるか、同じ業界で職種を変える選択肢を先に検討してください。
キャリアチェンジを優先する場合は、入社後の昇給・評価の仕組みを確認し、何年で現職の年収に戻せるかを試算してから決めると、後悔が少なくなります。年収が下がる原因と対策は「転職で年収が下がる5つの原因と対策」で解説しています。
まとめ:年収は「相場を知って交渉した人」に上がる

転職で年収を上げるために押さえる要点は、次の5つです。
- 年収は現職の額ではなく、応募先での市場価値で決まる
- 相場は公的統計・転職サイト・エージェントなど3つ以上の情報源で、自分に近い条件の数字を調べる
- 複数社を並行して進めることが、そのまま交渉材料になる
- 実績を数字に置き換えられるかどうかが、提示額を左右する
- 交渉は内定後・承諾前に、相場と実績を根拠にして行い、内訳を書面で確認する
交渉しなければ、提示額がそのまま年収になります。まずは自分の相場を数字で把握することから始めてください。
年収を上げる転職を一人で進めるのが不安な方へ

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転職で年収を上げる方法に関するよくある質問
転職で年収はどのくらい上がりますか?
決まった上がり幅はなく、職種・経験年数・転職先の業界によって変わります。厚生労働省「雇用動向調査」では、転職で賃金が増えた人と減った人の割合が毎年公表されており、上がる人と下がる人の両方がいます。自分の場合の目安は、同職種・同経験年数の相場と現職の年収の差から見積もってください。
転職で年収が下がることはありますか?
あります。未経験の業界・職種への転職、年収水準の低い業界への転職、賞与や固定残業代を含めた総額だけを見て承諾した場合に起こりやすいです。内定時に基本給・賞与・固定残業代の内訳を労働条件通知書で確認すると防げます。
年収交渉はいつ、誰に伝えればよいですか?
内定の連絡を受けてから承諾するまでの間に、企業の採用担当者か、転職エージェント経由で伝えます。エージェントを利用している場合は、担当者に希望額と根拠(相場と実績)を伝えて代行してもらう方が、企業との関係を損ねにくいです。
転職エージェントは本当に無料で使えますか?
求職者は無料で利用できます。有料職業紹介事業者が求職者から手数料を受け取ることは、職業安定法第32条の3第2項で原則として禁止されているためです。費用は採用する企業が負担します。
未経験の業界・職種に転職しても年収は上がりますか?
業界も職種も変える場合は未経験者として扱われ、一時的に年収が下がることが多いです。年収を維持しながら転職したい場合は、同じ職種で年収水準の高い業界に移るか、同じ業界で職種を変える方法を先に検討してください。
年収相場はどこで調べられますか?
厚生労働省「賃金構造基本統計調査」や国税庁「民間給与実態統計調査」などの公的統計、doda・リクナビNEXTなど転職サイトの年収データ、転職エージェントへの質問、OpenWorkなどの口コミサイト、同職種の求人票で調べられます。3つ以上を組み合わせ、経験年数・企業規模・勤務地が自分に近い数字を見てください。
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