転職で年収が下がる主な原因は、自分の年収相場を知らないまま提示額を受け入れてしまうことです。原因を知り、事前準備・交渉・内定後の条件確認を行えば、年収ダウンの多くは防げます。また、未経験分野への転職のように、一時的に年収が下がっても合理的なケースもあります。
この記事では、年収が下がる5つの原因、下げないための準備と交渉、内定後の確認事項、年収が下がっても後悔しない判断基準を解説します。
転職で年収が下がることは珍しくない|まず知っておきたい結論

転職で年収が下がることは珍しくありません。厚生労働省の「雇用動向調査」では、転職入職者のうち賃金が前職より「減少」した人が毎年一定の割合で報告されています(減少した人の割合は約30〜40%、要確認)。
ただし、年収が下がった人の多くは、下がることを事前に想定していません。問題は年収が下がること自体ではなく、下がることを想定できていないことです。
年収ダウンを「想定内」にするために必要なことは、次の3つです。
- 自分の年収相場を、転職活動を始める前に知る
- 提示額を受け入れる前に、交渉と条件の内訳確認をする
- 年収が下がってもよい転職かどうかを、自分の基準で判断する
転職で年収が下がる5つの原因

転職で年収が下がる原因は、市場価値の把握不足、業界・職種の給与水準の差、交渉不足、タイミングの悪さ、スキルのミスマッチの5つに分けられます。いずれも、転職活動を始める前に対策できるものです。
原因1:自分の市場価値を把握していない
転職で年収が下がる最大の原因は、自分の市場価値を把握していないことです。市場価値とは、転職市場で企業があなたのスキルと実績に対して支払ってもよいと考える年収の水準のことです。
現職の年収は、市場価値と一致するとは限りません。たとえば大手企業に長く勤めている場合、企業の規模や業績によって給与が底上げされていることがあります。転職市場では「その企業での年収」ではなく「個人のスキルと実績」が評価されるため、企業規模が変わると、同じ仕事内容でも年収が下がることがあります。
特定の社内システムや業務フローに特化したスキルも、他社では汎用性が低いと判断され、評価されにくい傾向があります。
原因2:業界・職種の給与水準が違う
業界や職種が変わると、給与水準そのものが変わります。同じ「営業職」でも、業界によって平均的な年収は異なります。
国税庁の「民間給与実態統計調査」では、業種別の平均給与が毎年公表されており、業種によって大きな差があることが分かります(差の上限は最大約300〜400万円、要確認)。一般に金融・IT・コンサルティングなどは水準が高く、小売・飲食・介護などは相対的に低い傾向があります。
「やりたい仕事に就きたい」という理由で異業種・異職種に転職する場合は、転職先の業界・職種の給与水準を事前に調べておく必要があります。業界・職種別の相場の見方は「転職年収相場を徹底解説!職種別・年代別の平均額と年収アップの3つのコツ」で解説しています。
原因3:年収交渉をしていない
年収交渉をしないことも、年収が下がる大きな原因です。企業が最初に提示する金額は、必ずしも上限ではありません。交渉の余地を残して提示されることもあり、交渉しなければ、本来得られた水準より低い年収で内定を受諾することになります。
「お金の話をするのは失礼ではないか」と考えて交渉を避ける人は少なくありません。しかし、根拠のある希望年収を丁寧に伝えることは転職活動の一部であり、失礼にはあたりません。
原因4:転職のタイミングが悪い
転職のタイミングも年収に影響します。特に影響が大きいのは、退職してから転職活動を始めることです。
収入がない状態で活動すると、「早く内定が欲しい」という焦りから、条件の低い企業でも受け入れやすくなります。また、プロジェクトの完了前や成果が出る直前など、実績を示しにくい時期に転職すると、評価が低くなりやすいです。
景気の後退期や業界全体が採用を絞っている時期も、企業側の立場が強くなり、年収が下がりやすくなります。
原因5:求められるスキルとのミスマッチ
転職先が求めるスキルと自分のスキルにずれがあると、即戦力として評価されず、低めの年収を提示されます。
たとえば、IT業界に転職したいのに求人票の必須スキルを満たしていない場合や、「マネジメント経験あり」と伝えても、転職先が求める組織の規模や役割と違う場合です。
求人票の「必須スキル」「歓迎スキル」を読み、自分のスキルとの差を正確に把握することが、ミスマッチを防ぐ第一歩です。求人票の読み方は「転職求人票の見方完全ガイド」で解説しています。
転職で年収が下がりやすい人の特徴

年収が下がりやすい人には、転職活動の進め方に共通点があります。次の5つに当てはまる場合は、活動の進め方を見直す必要があります。
| 特徴 | なぜ年収が下がるのか | 見直し方 |
|---|---|---|
| 転職理由が「今の会社から逃げたい」 | 企業選びの基準が甘くなり、条件を妥協しやすい | 「何から逃げるか」ではなく「何を実現したいか」を言葉にする |
| 転職回数が多い | 定着性を懸念され、提示額が抑えられることがある | 各転職の一貫性と、キャリアアップの理由を説明できるようにする |
| 応募先を1社に絞っている | 比較対象がなく、交渉材料もない | 複数社に並行して応募する |
| 自己分析が不十分 | 強みや実績を語れず、評価が低くなる | 実績を数字で整理する |
| 相場を調べていない | 提示額が適正かどうか判断できない | 同職種・同業界の相場を調べる |
「とりあえず転職してみよう」という曖昧な動機で活動を始めると、年収ダウンのリスクは特に高くなります。活動を始める前に「なぜ転職するのか」「何を実現したいのか」を言葉にしておくことが重要です。
転職で年収を下げないための事前準備5つ

年収を下げない転職は、応募を始める前の準備でほぼ決まります。準備すべきことは次の5つです。
準備1:自分の年収相場を複数の情報源で調べる
転職活動を始める前に、同職種・同業界・同経験年数の年収相場を調べます。1つの情報源に頼らず、複数を組み合わせることで精度が上がります。
- 転職エージェント:面談で、自分のスキルに対する市場の年収水準を教えてもらえます
- 企業口コミサイト(OpenWorkなど):社員・元社員の投稿から、企業ごとの実態に近い年収を確認できます
- スカウト型サービス(ビズリーチなど):届くスカウトの内容が、自分への市場の評価を知る手がかりになります
- 求人票の給与欄:複数の求人を比較すると、職種・業界の年収レンジが分かります
調べた結果を「○○万円から○○万円」という具体的な幅で持っておくと、提示額が妥当かどうかを判断できます。
準備2:在職中に転職活動を進める
年収を下げないためには、在職中に転職活動を進めることが原則です。
在職中であれば「今の会社に残る」という選択肢が残るため、条件の低い内定を断ることができ、年収交渉にも落ち着いて臨めます。退職後の活動と比較すると、次のような違いがあります。
| 比較項目 | 在職中の転職活動 | 退職後の転職活動 |
|---|---|---|
| 収入 | 継続している | 途切れる |
| 心理状態 | 余裕がある | 焦りが出やすい |
| 交渉 | 断る選択肢があるため強い | 妥協しやすい |
| 内定の比較 | 複数の内定を待って比較できる | 早く出た内定を受けがち |
| 活動時間 | 限られる | 確保しやすい |
在職中の活動は時間の確保が課題になりますが、年収を守るという点では退職後より有利です。
準備3:複数社に並行して応募する
複数社に並行して応募し、複数の内定を比較できる状態を作ることが、年収交渉の土台になります。
他社の提示額があれば、「A社からは○○万円の提示を受けています。御社でも同水準をご検討いただけますか」という具体的な交渉ができます。1社だけに応募していると、比較対象がなく、提示額が妥当かどうかも判断できません。
適切な応募社数の目安は「転職で何社に応募すべき?2026年最新の目安と内定率を上げる5つのコツ」で解説しています。
準備4:実績を数字で語れるようにする
面接や年収交渉で希望年収を通すには、「なぜその年収に値するのか」を実績で説明する必要があります。
「営業成績が良かった」ではなく、「担当顧客の売上を前年比で○%伸ばした」「○人のチームを率いて○件の案件を完了した」のように、数字で語れる形に整理しておきます。
整理には、STAR法が役立ちます。STAR法とは、Situation(状況)、Task(役割)、Action(行動)、Result(結果)の4つの要素で実績を説明する方法です。
- Situation:どんな状況・課題があったか
- Task:自分の役割と責任は何だったか
- Action:具体的にどう行動したか
- Result:どんな結果が出たか(できるだけ数字で)
準備5:スキルアップで市場価値を高める
転職活動の前に、転職先の業界・職種で評価されるスキルや資格を身につけておくことも有効です。
評価されやすいスキルの例として、ITスキル(プログラミング、データ分析、クラウド)、語学、プロジェクトマネジメント、業界の専門資格などがあります。ただし、スキルや資格は「持っているだけ」では年収に直結しません。転職先の求人票で求められているものに絞り、業務でどう活かせるかまで説明できるようにしておくことが大切です。
年収交渉と内定後の条件確認で年収ダウンを防ぐ

準備ができたら、交渉と内定後の条件確認で年収を守ります。確認を怠ると、額面は同じでも実質的に年収が下がることがあります。
転職エージェントに年収交渉を任せる
自分で交渉することに不安がある場合は、転職エージェントに年収交渉を任せる方法があります。転職エージェントとは、求職者に求人を紹介し、応募から内定までを仲介する人材紹介サービスのことで、求職者は無料で利用できます。
転職エージェントを使うメリットと注意点は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| メリット | 相場情報を持っている/企業との年収交渉を代行してくれる/転職サイトに出ていない求人を紹介されることがある/書類・面接の対策を受けられる |
| 注意点 | 担当者によって質に差がある/紹介される求人がエージェントの得意分野に偏ることがある/希望を明確に伝えないと、条件の合わない求人を勧められることがある |
| 向いている人 | 初めての転職で相場が分からない人、企業との直接交渉に抵抗がある人 |
| 向いていない人 | 応募先が決まっていて、自分で条件交渉まで進めたい人 |
希望年収の伝え方と交渉のタイミング
希望年収は、「現職の年収」「調べた相場」「実績」の3つを根拠にして伝えます。
伝え方の例は次のとおりです。
- 「現職の年収は○○万円です。同職種の相場と、前職での○○の実績を踏まえ、○○万円以上を希望しています」
- 「他社から○○万円の提示を受けています。御社を第一希望に考えているため、同水準をご検討いただけますか」
交渉のタイミングは、企業側から希望年収を聞かれたときか、内定の提示を受けて条件を確認する段階が基本です。一次面接の冒頭など、評価が固まる前に金額の話を先に出すと、印象を損ねることがあります。
交渉の進め方と例文は「転職年収交渉で失敗しない!」で詳しく解説しています。
労働条件通知書で固定残業代と賞与の条件を確認する
内定時に提示された年収は、必ず書面で内訳を確認します。
使用者は、労働契約を結ぶ際に賃金・労働時間などの労働条件を明示する義務があります(労働基準法第15条第1項)。求人の段階でも、求人者には労働条件を明示する義務があります(職業安定法第5条の3)。提示額の内訳を確認することは、求職者の当然の権利です。
特に確認すべき項目は次の3つです。
| 確認項目 | 確認するポイント | 見落とすとどうなるか |
|---|---|---|
| 固定残業代(みなし残業代) | 何時間分がいくら含まれているか、超過分は支払われるか | 額面は同じでも、残業込みの年収だった |
| 賞与 | 支給の条件、業績連動の有無、前年の支給実績 | 想定していた賞与が支給されない |
| 各種手当 | 住宅手当・通勤手当・役職手当の有無と条件 | 手当込みの提示で、基本給が低い |
固定残業代とは、あらかじめ一定時間分の残業代を給与に含めて支払う制度のことです。厚生労働省は、固定残業代を採用する場合、その金額・時間数・超過分の割増賃金を支払う旨を求人票などに明示するよう求めています(職業安定法に基づく指針、要確認)。
同じ「年収600万円」でも、固定残業代を含むかどうかで実質的な条件は変わります。額面ではなく、労働時間を含めた実質で比較してください。
年収が下がっても後悔しない転職の判断基準

年収が下がる転職が、すべて失敗というわけではありません。合理的な理由があり、減収を事前に想定できているなら、後悔しにくい転職です。
年収ダウンを受け入れてよいケースと、避けるべきケースの違いは次のとおりです。
| 受け入れてよいケース | 避けるべきケース |
|---|---|
| 未経験分野への転職で、数年後に伸びる見込みがある | 同業・同職種なのに相場より低い提示 |
| 残業が大幅に減り、時間あたりの待遇は上がる | 固定残業代や賞与の条件を確認していない |
| 生活費と貯蓄を計算し、減収しても生活が成り立つ | 「早く辞めたい」という焦りで決めた |
| 昇給・昇格の基準が明確で、到達額が見えている | 昇給の仕組みを説明してもらえない |
未経験分野への転職は一時的な減収を前提にする
未経験の業界・職種へ転職する場合は、一時的に年収が下がることを前提に見通しを立てます。
未経験者は即戦力として評価されないため、初年度の提示額は経験者より低くなるのが一般的です。その代わり、経験を積めば数年後に現職の水準を超える可能性があります。減収を「想定内」として計画できるかどうかで、転職後の満足度は変わります。
未経験転職の年収の考え方は「未経験転職で年収はどう変わる?失敗しない5つの戦略と成功事例」で解説しています。
入社時の年収より3年後の到達額で判断する
転職先を判断するときは、入社時の年収だけでなく、3年後にどの程度の年収に到達できるかを基準にします。
入社時の年収が少し低くても、昇給の幅や昇格の基準が明確な企業であれば、数年で逆転することがあります。逆に、入社時の年収が高くても昇給がほとんどない企業では、長期的な収入は伸びません。
面接や内定後の面談で「入社3年目の年収の目安」「昇給・昇格の基準」を確認しておくと、判断材料になります。
年収以外の条件を含めた実質で比較する
転職先の待遇は、額面の年収だけでは比較できません。次の項目を含めて、生活全体の実質で比較します。
- 賞与・インセンティブ:基本給が低くても、賞与の比率が高ければ年収総額で上回ることがあります
- 昇給・昇格の速さ:入社時の差は、昇給スピードで数年後に埋まることがあります
- 福利厚生:住宅手当、退職金制度、企業型確定拠出年金などは金銭的な価値に換算できます
- 残業時間:月の残業時間が大幅に減れば、時間あたりの待遇は上がります
- リモートワーク・フレックス制度:通勤の費用と時間を減らせます
これらを一覧にして現職と転職先を並べると、額面だけでは見えない実質の違いが分かります。
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転職で年収が下がることに関するよくある質問
転職で年収が下がるのは普通のことですか?
珍しいことではありません。厚生労働省の「雇用動向調査」でも、転職後に賃金が減少した人は毎年一定の割合で報告されています。ただし、減収の多くは相場を知らないまま提示額を受け入れることで起きており、事前準備と交渉で防げます。
転職で年収はどのくらいまで下がっても大丈夫ですか?
一律の基準はありません。判断の軸は「減収しても生活費と貯蓄が成り立つか」と「3年後に現職の水準を超える見込みがあるか」の2つです。この2つを満たさない減収は、避けたほうがよい転職です。
未経験の職種に転職すると必ず年収は下がりますか?
必ず下がるわけではありませんが、初年度は下がることが多いです。未経験者は即戦力として評価されないためです。一方で、転職先の業界の給与水準が現職より高い場合や、前職の経験を活かせる場合は、下がらないこともあります。
年収が下がった転職は失敗ですか?
減収を事前に想定し、合理的な理由があるなら失敗ではありません。未経験分野への挑戦、残業の大幅な削減、明確な昇給の見込みなどが理由であれば、長期的には満足度の高い転職になることがあります。失敗になりやすいのは、想定せずに下がった場合と、条件の内訳を確認せずに決めた場合です。
年収交渉はいつ、どのように伝えればよいですか?
企業から希望年収を聞かれたとき、または内定の提示を受けたときが基本です。伝えるときは、現職の年収・調べた相場・実績の3つを根拠にして、「○○万円以上を希望しています」と具体的な金額で伝えます。面接の序盤で金額の話を先に出すことは避けたほうが無難です。
内定後に提示された年収が希望より低いときはどうすればよいですか?
まず、提示額の内訳(固定残業代・賞与・手当)を書面で確認します。そのうえで、希望との差額と根拠を伝えて再検討を依頼します。転職エージェント経由であれば、担当者に交渉を依頼できます。再検討が難しい場合は、昇給の基準や入社後の見直し時期を確認したうえで、受諾するか辞退するかを判断します。
転職エージェントに任せれば年収は下がりませんか?
エージェントを使えば必ず年収が維持されるわけではありません。エージェントは相場情報の提供と交渉の代行をしてくれますが、最終的な提示額は企業の評価と予算で決まります。自分でも相場を調べ、希望年収の根拠を用意しておくことが必要です。
まとめ|年収ダウンは「想定内」にできる

転職で年収が下がる原因は5つあり、いずれも転職活動を始める前の準備で対策できます。この記事の要点は次のとおりです。
- 年収ダウンの多くは、相場を知らないまま提示額を受け入れることで起きる
- 在職中に活動し、複数社に応募し、実績を数字で語れるようにしておく
- 希望年収は、現職の年収・相場・実績を根拠に、具体的な金額で伝える
- 内定後は労働条件通知書で、固定残業代・賞与・手当の内訳を確認する
- 未経験分野への転職では、一時的な減収を前提に、3年後の到達額で判断する
年収が下がること自体より、想定できていないことが問題です。提示を受ける前に、自分の相場を確かめておくことが、年収を守る最も確実な方法です。
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