転職で年収が上がる人とは、自分の市場価値を数字で把握し、転職前の準備と内定後の年収交渉を省略しない人です。スキルや経歴の差よりも、この「準備」と「交渉」の有無で転職後の年収は大きく分かれます。
厚生労働省の調査では、転職者のうち前職より賃金が増えた人の割合は約36%で、減った人の割合もほぼ同じ約36%とされています(調査名・年次は要確認)。転職すれば自動的に年収が上がるわけではなく、戦略的に動いた人だけが年収アップを実現しているのが実態です。
この記事では、転職で年収が上がる人の特徴を8つに整理し、転職前・転職活動中・転職後の3つの段階に分けて解説します。年収が上がらない人との違いと、今日から実行できる対策も紹介します。
転職で年収が上がる人と上がらない人の根本的な違い

転職で年収が上がる人と上がらない人の違いは、「市場価値への理解」と「準備の徹底度」にあります。転職を「対等なビジネス交渉」と捉えて動けるかどうかで、同じスキルを持っていても結果が分かれます。
年収が上がらない転職者の典型的なパターン
年収が上がらない転職者には、次の5つの共通パターンがあります。
- 「今の会社が嫌だから」という理由だけで転職を始めている
- 自分のスキルや経験が転職市場でどのくらいの年収に相当するかを把握していない
- 転職エージェントや求人サイトに判断をすべて任せている
- 年収交渉を「図々しい行為」と考えて一切行わない
- 転職先の業界・企業の給与水準を事前に調べていない
上記に当てはまる人は、どれだけ優秀なスキルを持っていても、転職で年収を上げにくくなります。転職は年収アップの手段のひとつに過ぎず、戦略なしに動くと「前の会社のほうが良かった」と後悔するケースも少なくありません。まずは自分の市場価値を正確に把握することが最優先です。
年収が上がる転職者に共通する考え方
年収が上がる転職者は、転職を「自分という資源を企業に提供し、対価として適切な報酬を受け取る交渉」として捉えています。具体的には、次の3つの考え方が共通しています。
- 「この会社で自分はどれだけの価値を生み出せるか」を常に考える
- 「今の給与は市場水準と比べて適正か」を定期的に確認する
- 転職活動を「就職活動の延長」ではなく「キャリアへの投資」と位置づける
考え方の違いが行動の違いを生み、行動の違いが転職後の年収差につながります。
【転職前】年収が上がる人の特徴1〜3

転職前の段階で年収が上がる人が必ず行っているのは、「市場価値の把握」「スキルの言語化」「転職の軸の設定」の3つです。転職活動の結果は、応募を始める前の準備でほぼ決まります。
特徴1:自分の市場価値を数字で把握している
市場価値とは、自分のスキルや経験に対して転職市場が提示する年収の水準です。年収が上がる人は、「自分はこのくらいもらえるはず」という感覚ではなく、実際の求人やスカウトの年収レンジという客観的なデータで市場価値を把握しています。
市場価値を調べる方法は、主に次の3つです。
| 方法 | 具体的なやり方 | 注意点 |
|---|---|---|
| スカウト型サービスに登録する | ビズリーチやリクルートダイレクトスカウトに職務経歴を登録し、企業やエージェントから届くスカウトの年収レンジを確認する | 経歴を詳しく書くほどスカウトの精度が上がる |
| 同職種の求人票を調べる | doda、Indeed、転職会議などで、自分と近い職種・経験年数の求人の年収帯を見る | 求人票の年収には幅があるため、上限ではなく中央付近を目安にする |
| 同職種の知人に聞く | 同じ職種・経験年数の友人や知人から年収の情報を集める | 相手の守秘義務や関係性に配慮する |
ミイダスやdodaには、スキルや経験を入力すると適正年収の目安を診断できる無料ツールがあります。まず無料の診断で目安を知り、次に求人票やスカウトで裏付けを取ると、交渉に使える根拠のある数字になります。
職種別・年代別の年収の目安を確認したい方は「転職年収相場を徹底解説!職種別・年代別の平均額と年収アップの3つのコツ」も参考にしてください。
特徴2:スキルと実績を「言語化」できている
年収が上がる人は、自分のスキルや実績を、採用担当者が価値を判断できる言葉で説明できます。
例えば「営業として10年頑張りました」という説明と、「新規開拓営業として3年間で担当顧客数を0から50社に拡大し、個人売上を年間1.2億円達成しました」という説明では、伝わる価値がまったく違います。
スキルを言語化するポイントは、次の3点です。
- 数字で表現する(売上金額、達成率、改善率、担当人数など)
- 自分の役割と貢献を切り分ける(チームの成果ではなく「自分が何をしたか」)
- その経験が転職先でどう活かせるかをセットで伝える
「何となく経験がある」状態から「このスキルでこの成果が出せる」と言える状態にすることが、年収交渉の根拠になります。実績の書き方は「職務経歴書の書き方完全ガイド」で詳しく解説しています。
特徴3:転職の軸(目的)が明確である
転職の軸とは、「なぜ転職するのか」「転職で何を実現したいのか」を判断基準として言葉にしたものです。年収が上がる人は、活動を始める前に転職の軸を決めています。
軸が曖昧なまま活動すると、焦りから条件を妥協して内定を承諾し、年収が横ばいや減少になりやすくなります。転職前に決めておく項目は次の4つです。
| 項目 | 決め方の例 |
|---|---|
| 年収の最低ライン | 「現状維持以上」「プラス50万円以上」など、具体的な数字で決める |
| 職種・業界の方向性 | 同じ職種で上を目指すのか、異業種・異職種に挑戦するのかを決める |
| 勤務条件の優先順位 | リモート勤務、勤務地、残業時間などから、譲れない条件を3つ以内に絞る |
| 5年後・10年後のキャリア像 | 今回の転職がその実現にどうつながるかを文章にする |
転職前の準備が整ったかどうかは、次の3点で確認できます。
- 求人票やスカウトで自分の適正年収の目安を調べた
- 自分の実績を数字で5つ以上言語化できた
- 転職の軸(最低年収・職種の方向性・優先条件)を決めた
この3つがそろって初めて、転職活動を始める準備が整います。
【転職活動中】年収が上がる人の特徴4〜6

転職活動中に年収が上がる人が行っているのは、「複数社の同時並行」「年収交渉の実施」「希望年収の高め設定」の3つです。いずれも、年収交渉で強い立場に立つための行動です。
特徴4:複数の選択肢を同時並行で進めている
年収が上がる転職者の多くは、5〜10社程度を同時に進めています。1社だけに絞ると「ここに入るしかない」という心理が働き、年収交渉で弱気になります。
複数社から内定を得られる状況を作ると、「他にも条件の良い会社がある」という余裕が生まれ、交渉で強い立場に立てます。実際に「A社の内定条件はこうですが、B社からはこの年収を提示いただいています。ご検討いただけますか」と、他社のオファーを交渉材料にするケースは珍しくありません。
同時並行で進めるときのポイントは次の3つです。
- スプレッドシートなどで各社の進捗と選考日程を一元管理する
- 内定の時期がそろうように、各社の選考をなるべく同じペースで進める
- 転職エージェントを複数併用し、求人の選択肢を広げる
エージェントを複数使うときの使い分け方は「転職エージェントは複数登録が正解!3つのメリットと使い分け完全ガイド」で解説しています。
特徴5:年収交渉を必ず行っている
年収が上がる人と上がらない人の最も大きな差のひとつが、年収交渉をするかどうかです。
dodaの調査では、転職時に年収交渉を行った人のうち約6割が、希望どおりかそれ以上の提示を受けたとされています(調査名・年次は要確認)。それでも多くの転職者は「図々しいと思われる」「内定を取り消されるかもしれない」と考え、交渉しないまま年収を確定させています。
年収交渉を成功させるポイントは次の4つです。
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| タイミング | 内定通知後、入社承諾前に行う。承諾後は交渉の余地がほぼ無い |
| 根拠 | 「もっと欲しい」ではなく、市場価値・他社オファー・実績を根拠にする |
| 金額 | 「少し上げてほしい」ではなく「○○万円を希望します」と具体的な金額で伝える |
| 交渉の窓口 | エージェント経由の応募なら、エージェントに交渉を依頼する |
避けたい交渉の仕方は次のとおりです。
- 「生活費が足りない」など個人的な事情を理由にする
- 内定を承諾した後に交渉を持ちかける
- 相場より大幅に高い金額を要求する(相場の10〜15%増し程度が現実的な範囲)
具体的な伝え方や例文は「転職年収交渉で失敗しない!」で紹介しています。
特徴6:希望年収を根拠つきで高めに伝えている
年収が上がる人は、希望年収を現在の年収より10〜20%高い金額で設定し、根拠とともに伝えています。「現状と同じくらいで構いません」「お任せします」と答えると、企業側に提示額を上げる理由がなくなります。
企業が最初に提示した金額から大きく上げることはまれです。一方、応募者が最初に高めの金額を根拠つきで示せば、「そこから少し調整する」という流れになり、結果として高い年収で着地しやすくなります。
希望年収を決める手順は次のとおりです。
- 現在の年収に10〜20%を上乗せした金額を、基本の希望額にする
- 同職種・同業界の年収相場の上限付近と照らし合わせ、金額が現実的か確認する
- 「最低ライン」と「希望ライン」の2段階で用意し、交渉に備える
例えば現在の年収が400万円なら、希望年収は440〜480万円と設定し、最低でも現状維持以上を条件として交渉するイメージです。
【転職後】年収が上がり続ける人の特徴7〜8

転職後も年収が上がり続ける人は、「入社後も市場価値を高め続ける」「転職を定期的なキャリア戦略として位置づける」という2つの特徴を持っています。転職は年収アップのゴールではなく、次のステップへの通過点です。
特徴7:入社後も市場価値を高め続けている
転職で一度年収が上がっても、その後の昇給が進まないケースがあります。年収が上がり続ける人は、入社後も次のような行動を続けています。
- 業界・職種に関連する資格の取得(IT系なら応用情報技術者やAWS認定資格、マーケティング系ならGoogle Analytics認定資格など)
- 業界の勉強会・セミナー・カンファレンスへの参加による人脈と最新情報の収集
- 副業やフリーランス案件での実績づくり(勤務先の就業規則で副業の可否を必ず確認する)
- 転職後1〜2年での社内評価の獲得と、昇給・昇進の実績づくり
入社前に「3年後にどんなスキルを持ち、どんなポジションにいるか」を書き出しておくと、入社後の行動指針になり、次の転職や社内の昇給交渉の根拠にもなります。市場価値の高め方は「転職スキルアップの方法7選」で詳しく解説しています。
特徴8:転職を定期的なキャリア戦略として位置づけている
年収が上がり続ける人は、転職を「嫌になったから逃げる行動」ではなく「キャリアを意図的に設計する手段」と捉えています。
具体的には、次のような考え方で動いています。
- 「今の会社でこのスキルと実績を積んだら、次はこの業界でこの年収を目指す」というステップアップ型の計画を持つ
- 転職したくなってから動くのではなく、常に市場の情報収集と自分の市場価値の確認を続ける
- 「転職しない」という選択肢も持ちながら、いつでも選べる状態を維持する
転職は一度きりの賭けではなく、長期的なキャリア投資の繰り返しであるという視点が、年収を上げ続ける土台になります。
年収が上がる人の8つの特徴チェックリスト

8つの特徴を段階ごとに一覧にまとめました。当てはまらない項目が、今の自分に足りない行動です。
| 段階 | 特徴 | 確認ポイント |
|---|---|---|
| 転職前 | 1. 市場価値を数字で把握している | 求人票やスカウトで適正年収の目安を調べたか |
| 転職前 | 2. スキルと実績を言語化できている | 実績を数字で5つ以上書けるか |
| 転職前 | 3. 転職の軸が明確である | 最低年収・職種の方向性・優先条件を決めたか |
| 活動中 | 4. 複数社を同時並行で進めている | 5社以上に応募し、進捗を一元管理しているか |
| 活動中 | 5. 年収交渉を必ず行っている | 内定後・承諾前に根拠と金額を示して交渉したか |
| 活動中 | 6. 希望年収を根拠つきで高めに伝えている | 現状の10〜20%増しを最低・希望の2段階で用意したか |
| 転職後 | 7. 入社後も市場価値を高め続けている | 3年後のキャリア計画を書き出したか |
| 転職後 | 8. 転職をキャリア戦略として位置づけている | 転職しない選択肢も含めて、常に選べる状態か |
年収アップを目的にした転職で注意したいこと

年収アップの転職では、「提示された年収の内訳」と「年収以外の条件」を確認しないまま内定を承諾しないことが重要です。金額だけを見て決めると、入社後に手取りや働き方の面で後悔することがあります。
内定時に確認したい項目は次のとおりです。
- 基本給と各種手当の内訳、賞与の有無と支給条件
- 残業代の扱い(固定残業代が含まれる場合は、その時間数と超過分の支払い方法)
- 昇給の仕組みと評価の時期
- 勤務地、勤務時間、休日など、転職の軸で決めた条件との一致
企業は労働契約を結ぶ際に、賃金や労働時間などの労働条件を書面などで明示する義務があります(労働基準法第15条、労働基準法施行規則第5条)。内定通知や労働条件通知書で内訳が分からない点は、承諾前に確認して問題ありません。
年収が下がるケースの原因と対策は「転職で年収が下がる5つの原因と対策」で解説しています。
年収アップの転職を一人で進めるのが不安な方へ
自分の市場価値の判断や年収交渉に自信が持てない場合は、第三者の視点を入れると判断しやすくなります。
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まとめ|8つの特徴はすべて今日から実行できる
転職で年収が上がる人の8つの特徴に、特別な才能や華やかな職歴が必要なものはありません。いずれも、意識して行動を変えれば誰でも実行できることです。
まず取りかかるなら、次の3つから始めてください。
- スカウト型サービスや転職エージェントに登録し、自分の市場価値の目安を知る
- 直近3年の実績を数字に置き換え、職務経歴書を更新する
- 「3年後にどうなっていたいか」を1枚に書き出し、転職の軸を決める
年収は運ではなく、準備と行動の結果です。8つのうち1つでも、今日から始めてみてください。
転職で年収が上がる人の特徴に関するよくある質問
転職で年収が上がる人の割合はどのくらいですか?
厚生労働省の調査では、転職で前職より賃金が増えた人は約36%、減った人も約36%とされています(調査名・年次は要確認)。転職者の全員が上がるわけではなく、市場価値の把握と年収交渉をした人が上がりやすいというのが実態です。
年収交渉はいつ行うのが正解ですか?
内定通知を受けた後、入社を承諾する前です。承諾後は条件が確定しているため、交渉の余地はほぼありません。面接の途中で希望年収を聞かれた場合は、根拠とともに高めの金額を伝えておき、最終的な交渉は内定後に行います。
希望年収はどのくらい高く伝えてよいですか?
現在の年収の10〜20%増しが目安です。同職種・同業界の年収相場の上限を超えない範囲で、「最低ライン」と「希望ライン」の2段階を用意しておくと交渉しやすくなります。相場を大幅に超える要求は、根拠を示せない限り通りにくくなります。
年収交渉は転職エージェントに任せてもよいですか?
エージェント経由で応募した場合は、エージェントに交渉を依頼する方法が有効です。企業に直接言いにくい金額の話を代わりに伝えてもらえます。ただし、希望額と根拠(市場価値・実績・他社オファー)は自分で整理してエージェントに伝える必要があります。
転職しても年収が上がらなかった場合、その転職は失敗ですか?
年収だけで失敗と判断する必要はありません。転職の軸として決めた勤務条件やキャリアの方向性が実現できていれば、目的は達成されています。年収が上がり続ける人は転職を通過点と捉え、入社後の実績づくりや市場価値の向上で次の年収アップにつなげています。
20代や経験が浅い場合でも年収交渉はできますか?
経験年数にかかわらず、根拠を示せれば交渉は可能です。実績が少ない場合は、同職種・同年代の年収相場と、他社からのオファーや保有スキル・資格を根拠にします。相場を大きく超える要求は避け、現状の10〜20%増しの範囲で具体的な金額を伝えることが基本です。
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