転職先の内定が出たあと、「試用期間中に解雇されることはあるのか」「給与や有給はどうなるのか」と不安になる方は少なくありません。
結論から言えば、試用期間中でも労働基準法は原則そのまま適用され、会社が自由に解雇できるわけではありません。一方で、期間の長さや延長条件、給与の設定は会社ごとに異なるため、入社前に書面で確認しておく必要があります。
この記事では、転職後の試用期間について押さえておくべき7つの注意点を、根拠となる法律とあわせて解説します。
この記事の結論(7つの注意点)
- 試用期間の長さと延長条件を、入社前に書面で確認する
- 試用期間中の給与・待遇・社会保険のルールを把握する
- 会社が評価しているポイントを理解し、勤怠を最優先で安定させる
- 解雇には客観的に合理的な理由が必要だと知っておく
- 本採用拒否を告げられたときの対応手順を用意しておく
- 最初の1か月で職場に馴染むための行動をとる
- 試用期間中の転職活動・退職は、契約内容を確認してから動く
転職の試用期間とは?期間の目安と法的な位置づけ

試用期間とは、会社が採用した人の能力・適性・勤務態度を実際の勤務を通じて見極めるために設ける期間です。入社日から始まり、期間が満了すると本採用に移行します。
重要なのは、試用期間中もすでに労働契約は成立しているという点です。「まだ社員ではない」「お試しだから守られない」という状態ではありません。
試用期間は「解約権留保付労働契約」という扱い
試用期間中の労働契約は、法律上「解約権留保付労働契約」と整理されています。会社が一定の解約権を留保したうえで成立している労働契約、という意味です。
この整理は、最高裁判所大法廷が昭和48年12月12日に言い渡した三菱樹脂事件判決で示されました。同判決では、試用期間中は通常の解雇よりも広い範囲で解約の自由が認められる一方、その行使は客観的に合理的な理由があり社会通念上相当と認められる場合に限られる、という枠組みが示されています。
つまり「試用期間中は解雇しやすい」は半分正しく、半分誤りです。通常より判断の幅は広いものの、理由なしの解雇は認められません。
試用期間の長さの目安と、法律上の上限
試用期間の長さについて、日数を直接定めた法律はありません。会社が就業規則や労働契約で自由に設定できます。
実務上は3か月または6か月に設定されることが多く、職種によっては1年としている会社もあります(期間の分布についての公的統計は未確認)。
ただし、期間を自由に設定できるといっても無制限ではありません。労働者を不安定な地位に長く置くことになるため、目的に照らして不合理に長い試用期間は無効と判断される可能性があります。
試用期間中も労働基準法・社会保険は原則そのまま適用される
試用期間中であっても、労働基準法・最低賃金法・労働安全衛生法などの労働関係法令は原則としてそのまま適用されます。
具体的には、次のような扱いになります。
- 賃金は最低賃金法で定める地域別最低賃金を下回ってはならない
- 労働基準法第32条の法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えた労働には、同法第37条に基づく割増賃金が必要
- 労働基準法第39条の要件を満たせば年次有給休暇が発生する
- 加入要件を満たせば、健康保険・厚生年金保険・雇用保険への加入手続きが必要
「試用期間だから残業代は出ない」「試用期間中は社会保険に入れない」といった説明は、法令上の根拠がありません。そうした説明を受けた場合は、書面での確認を求めてください。
注意点1:試用期間の長さと延長条件を入社前に書面で確認する

最初に確認すべきは、試用期間の開始日・終了日と、延長の有無です。口頭で「3か月です」と説明されていても、就業規則には「最長1年まで延長できる」と書かれているケースがあります。
労働基準法第15条は、会社が労働契約を結ぶ際に労働条件を明示することを義務づけています。明示すべき事項の多くは書面での交付が必要とされているため、労働条件通知書または雇用契約書を必ず受け取ってください。
労働条件通知書・雇用契約書で確認すべき5項目
| 確認項目 | 見るポイント |
|---|---|
| 試用期間の有無と期間 | 開始日と終了日が具体的に書かれているか |
| 延長の可否と上限 | 「延長する場合がある」の記載と、最長何か月までか |
| 試用期間中の賃金 | 本採用後と金額が違うか、違うなら差額はいくらか |
| 本採用の判断基準 | どのような場合に本採用しないのかが記載されているか |
| 適用される就業規則 | 試用期間中に適用が除外される制度があるか |
内定から入社までにやるべき対応全体は「転職内定後にやるべき対応7選」で整理しています。あわせて確認しておくと、確認漏れを防げます。
試用期間の延長が認められる条件
試用期間の延長は、就業規則や労働契約に延長の定めがあり、かつ延長する合理的な理由がある場合に限って認められると考えられています。
会社側が「もう少し様子を見たい」という理由だけで一方的に延長を繰り返すことは、労働者を不安定な地位に置き続けることになるため、認められない可能性があります。延長を告げられた場合は、延長の根拠となる規定と、延長後の期間、延長理由を確認してください。
口頭説明と書面が食い違うときの対処
面接や内定時の口頭説明と、労働条件通知書の記載が食い違う場合は、入社前に人事担当者へ質問し、回答をメールなど記録が残る形で受け取ってください。
求人票の記載内容と実際の労働条件が異なる場合の見極め方は「転職求人票の見方完全ガイド」で解説しています。
注意点2:試用期間中の給与・待遇・社会保険のルールを把握する

試用期間中の給与を本採用後より低く設定すること自体は、違法ではありません。ただし、その旨が労働条件通知書や就業規則に明記されていること、そして地域別最低賃金を下回らないことが前提です。
試用期間中の給与を下げること自体は違法ではない
給与差を設ける場合、会社は事前にその内容を明示する必要があります。明示がないまま入社後に一方的に減額された場合は、労働条件の不利益変更にあたる可能性があります。
なお、試用期間中の減額を認める例外として、都道府県労働局長の許可を受けたうえで最低賃金額を一定割合下回ることができる「最低賃金の減額の特例許可制度」(最低賃金法第7条)があります。ただし許可が必要な制度であり、会社が独自の判断で最低賃金を下回ることはできません。
試用期間中でも社会保険・雇用保険の加入義務はある
健康保険・厚生年金保険は、加入要件を満たす働き方であれば入社日から加入手続きが必要です。雇用保険も、週の所定労働時間や雇用見込み期間の要件を満たせば加入対象になります。
試用期間であることを理由に加入を先送りすることは認められていません。入社後1か月ほど経っても保険証の交付や資格取得の連絡がない場合は、人事担当者に進捗を確認してください。
本採用後との待遇差の比較表
| 項目 | 試用期間中 | 本採用後 |
|---|---|---|
| 基本給 | 会社が事前に明示していれば低く設定可 | 契約・就業規則に定めた額 |
| 割増賃金(残業代) | 法定要件を満たせば支払い義務あり | 同じ |
| 年次有給休暇 | 労働基準法第39条の要件を満たせば発生 | 同じ |
| 社会保険・雇用保険 | 加入要件を満たせば加入義務あり | 同じ |
| 解雇のルール | 解約権が留保されるが、理由は必要 | 労働契約法第16条の解雇権濫用法理が適用 |
注意点3:試用期間中に会社が評価しているポイントを理解する

試用期間中に会社が見ているのは、専門スキルの高さよりも「この職場で継続して働けるか」という点です。評価項目を知っておくと、日々の行動の優先順位を決めやすくなります。
会社が見ている7つの評価項目
- 勤怠の安定:遅刻・欠勤・早退が繰り返されていないか
- 報告・連絡・相談:進捗や問題を適切なタイミングで共有できるか
- 指示の理解と実行:指示された内容を正確に理解し、実行できるか
- 学習姿勢:分からないことを調べ、質問し、次に活かせているか
- コミュニケーション:上司・同僚・取引先と業務上必要なやり取りができるか
- 問題への対処:困ったときに抱え込まず、相談・報告ができるか
- 職場への適合:会社のルールや進め方を理解し、尊重しているか
評価を下げやすい行動
次のような行動は、能力とは別の理由で評価を下げてしまう可能性があります。
- 無断欠勤・無断遅刻
- 報告・連絡・相談を省略する
- 「前の会社ではこうでした」を頻繁に持ち出す
- 依頼された業務を理由を示さずに断る
- 職場のルールや手順を確認せずに自己流で進める
最優先は勤怠の安定
7項目のうち、最初に整えるべきは勤怠です。勤怠の乱れは客観的な記録として残るため、能力評価と違って本人の努力が言い訳として通りにくくなります。
体調や通勤経路の問題で出勤が不安定になりそうな場合は、隠さずに早い段階で上司へ相談してください。事前に共有された事情と、無断欠勤とでは扱いがまったく異なります。
注意点4:試用期間中の解雇には客観的に合理的な理由が必要だと知る

試用期間中の解雇は、通常の解雇よりも判断の幅が広く認められますが、自由にできるわけではありません。客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当と認められない解雇は、労働契約法第16条により無効となります。
解雇が認められやすいケース・認められにくいケース
| 認められやすいケース | 認められにくいケース |
|---|---|
| 応募時に申告した経歴・資格に虚偽があった | 「社風に合わない」という主観的な理由だけ |
| 重大な規律違反(暴力行為、横領など)があった | 業務の習得に時間はかかるが改善努力が見られる |
| 勤怠不良が続き、注意しても改善の見込みがない | 正当な理由のある病気・けがによる欠勤 |
| 客観的な記録から能力不足が明らかで、指導しても改善しない | 会社が必要な指導・教育を行っていない |
判断の分かれ目は「会社が改善の機会を与えたか」です。指導や注意の記録がないまま解雇された場合、その解雇が無効と判断される可能性があります。
解雇予告のルール(入社14日を境に扱いが変わる)
労働基準法第20条は、労働者を解雇する場合に少なくとも30日前の予告、または30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)の支払いを義務づけています。
一方、同法第21条は「試の使用期間中の者」をこの規定の適用除外としつつ、14日を超えて引き続き使用されるに至った場合には適用すると定めています。
つまり、入社から14日以内は解雇予告が不要ですが、14日を超えて働いた後は、試用期間中であっても30日前の予告または解雇予告手当が必要です。
解雇を告げられたときにまずやること
- 解雇日と解雇理由を確認する
- 解雇理由証明書を請求する(労働基準法第22条により、労働者が請求した場合、会社は遅滞なく交付する義務があります)
- 労働条件通知書、就業規則、指導記録、勤怠記録などの資料を手元にそろえる
- 納得できない場合は、都道府県労働局や労働基準監督署に設置されている総合労働相談コーナー、または弁護士に相談する
その場で退職届に署名しないことが重要です。自ら署名すると、解雇ではなく合意退職として扱われ、後から争いにくくなります。
注意点5:本採用拒否を告げられたときの対応手順を用意しておく

本採用拒否とは、試用期間の満了時に会社が本採用に移行しないと判断することです。留保していた解約権を行使する行為であり、法的には解雇に準じて扱われます。
本採用拒否と解雇の違い
本採用拒否は「期間満了だから自動的に契約が終わる」ものではありません。試用期間付きの労働契約は期間の定めのない契約であることが一般的なため、本採用拒否にも客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が求められます。
会社側に理由の説明がなく、「試用期間が終わったので終了です」とだけ告げられた場合は、その判断が無効となる可能性があります。
告げられた直後にとる4つの手順
- 理由を具体的に確認する:「どの業務の、どの点が基準に達していなかったのか」を聞く
- 書面での提示を求める:口頭だけでなく、理由を記載した書面の交付を求める
- 反論・改善提案の機会を求める:改善計画を示すことで判断が変わる場合がある
- 相談先に連絡する:納得できない場合は外部の相談窓口へ
相談先の一覧
| 相談先 | 相談できる内容 |
|---|---|
| 総合労働相談コーナー(都道府県労働局・労働基準監督署内) | 解雇、労働条件、いじめなど労働問題全般の無料相談 |
| 労働基準監督署 | 賃金不払い、割増賃金未払いなど労働基準法違反 |
| 弁護士 | 解雇無効の主張、損害賠償請求などの法的手続き |
| 労働組合(社外のものを含む) | 会社との交渉の代行・同席 |
注意点6:最初の1か月で職場に馴染むための行動をとる

試用期間の評価は、入社直後の数週間で形づくられる傾向があります。専門スキルを短期間で示すことは難しいため、最初の1か月は「情報を集め、確認し、記録する」ことに集中するのが現実的です。
早く馴染むための5つの行動
- 挨拶を欠かさない:名前と顔を覚えてもらうことが、質問しやすい関係の前提になる
- 分からないことは早めに聞く:確認の遅れは手戻りにつながり、評価を下げやすい
- 記録を残す:手順・用語・担当者名をメモし、同じ質問を繰り返さないようにする
- 期限と優先順位を確認する:依頼を受けたら、いつまでに・どの水準でを必ず確認する
- 依頼への返答を早くする:着手が後になる場合でも、受領した旨をすぐ伝える
前職の話の出し方に注意する
前職の経験は資産ですが、「前の会社ではこうでした」という言い方は、現在の職場の進め方を否定していると受け取られることがあります。
改善提案をしたい場合は、前職を引き合いに出すのではなく、「この作業でこういう課題があるように見えるのですが、変えられる余地はありますか」と、現在の職場の状況を主語にして伝えると受け入れられやすくなります。
なお、入社後に労働環境が求人内容と大きく異なると感じた場合は、環境そのものに問題がある可能性もあります。判断材料は「転職でブラック企業を見分ける10の方法」にまとめています。
注意点7:試用期間中の転職活動・退職はルールを確認してから動く

試用期間中に転職活動を行うこと自体は、違法ではありません。職業選択の自由は日本国憲法第22条第1項で保障されています。ただし、進め方を誤ると不利益を受ける可能性があります。
試用期間中の転職活動は違法ではない
注意すべきは、次の3点です。
- 業務に支障を出さない:面接のための無断欠勤・遅刻は、勤怠不良として評価に直結する
- 秘密保持義務を守る:業務上知り得た情報を社外に持ち出すことは、契約違反や法令違反になり得る
- 競業避止の定めを確認する:雇用契約や就業規則に競合他社への転職を制限する条項がある場合は、内容を確認する
試用期間中に退職する場合の申し出時期
期間の定めのない労働契約では、民法第627条第1項により、労働者は解約の申し入れから2週間を経過すれば労働契約を終了できます。試用期間中でもこの規定は適用されます。
ただし、就業規則で「退職の1か月前までに申し出ること」と定めている会社も多く、引き継ぎの都合もあります。まずは就業規則の記載を確認し、可能な範囲で余裕をもって伝えるほうが、円満に進みます。
退職前に確認しておくこと
- 健康保険証の返却時期と、次の健康保険への切り替え方法
- 離職票・源泉徴収票・年金手帳など、受け取る書類の受領時期
- 貸与物(PC、社員証、制服など)の返却方法
- 未消化の有給休暇の扱い
退職から入社までの手続き全体の流れは「転職・退職手続きの流れ7ステップ」で解説しています。
試用期間の不安が解消しないときは転職のプロに相談する
労働条件通知書を読んでも判断がつかない、本採用拒否を告げられて次の動き方が分からない、という段階では、一人で抱え込まず第三者に相談することをおすすめします。
UNLITD CAREERを運営する株式会社アンリット(有料職業紹介事業 許可番号 13-ユ-319937)では、無料の転職相談を受け付けています。内定先の労働条件の見方、試用期間の条件交渉の進め方、本採用に至らなかった場合の次の選択肢まで、状況にあわせて整理をお手伝いします。
相談したからといって、応募や転職を必ず進める必要はありません。判断材料を増やす目的だけでも構いませんので、一度ご相談ください。
転職の試用期間に関するよくある質問
転職後の試用期間は一般的にどのくらいですか?
3か月または6か月に設定している会社が多く見られます。試用期間の長さを直接定めた法律はなく、会社が就業規則や労働契約で設定します。ただし目的に照らして不合理に長い期間は無効と判断される可能性があります。
試用期間中に有給休暇は取れますか?
条件を満たせば取得できます。労働基準法第39条は、雇入れの日から6か月間継続して勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者に年次有給休暇を付与すると定めています。試用期間も同じ労働契約の一部として勤続期間に通算されます。試用期間が3か月や6か月の会社では、試用期間中に付与日が来ないことが一般的です。
試用期間中でも残業代は支払われますか?
支払われます。労働基準法第32条の法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えて働いた場合、同法第37条により会社には割増賃金の支払い義務があります。試用期間であることは支払いを免れる理由になりません。支払われていない場合は、勤怠記録を残したうえで労働基準監督署に相談してください。
試用期間中の給与が低い場合、本採用後に上がりますか?
労働条件通知書や就業規則に「本採用後の賃金」として金額が明記されていれば、その額に移行します。逆に明記がない場合は、自動的に上がるとは限りません。金額と昇給時期が書面に記載されているかを、入社前に確認してください。
試用期間は延長されることがありますか?
就業規則や労働契約に延長の定めがあり、かつ延長する合理的な理由がある場合に限って認められると考えられています。延長の定めがないのに一方的に延長することや、理由を示さずに延長を繰り返すことは認められない可能性があります。延長を告げられたら、根拠となる規定・延長後の期間・理由の3点を確認してください。
試用期間中に退職する場合、いつまでに伝えればよいですか?
民法第627条第1項により、期間の定めのない労働契約では、解約の申し入れから2週間を経過すれば退職できます。ただし就業規則で1か月前までの申し出を求めている会社もあるため、まず就業規則を確認し、引き継ぎを含めて余裕をもって伝えることをおすすめします。
試用期間中に退職したら退職金はもらえますか?
多くの場合、支給されません。退職金は法律上の義務ではなく、会社の退職金規程に基づく制度です。支給の条件として一定の勤続年数(例:3年以上)を定めていることが一般的で、試用期間中の退職ではその条件を満たさないためです。制度の有無と支給条件は、就業規則または退職金規程で確認してください。
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