転職活動をしながら副業を続けてよいのか、判断に迷う方は少なくありません。収入は手放したくない一方で、選考に不利になるのではないか、現職に知られるのではないかという不安もあります。
この記事では、転職活動中に副業を続けられる条件、両立のための5つのコツ、就業規則と確定申告の注意点を解説します。副業の経験を選考で活かす書き方と、副業を認めている企業の探し方もあわせて紹介します。
転職活動中に副業を続けることは可能です

転職活動中に副業を続けることは、原則として可能です。禁止しているのは法律ではなく、勤務先の就業規則と契約内容だからです。判断の順番は、法律を確認するのではなく、現職の就業規則、副業先との契約、転職先の方針の3つを確認することになります。
副業そのものを禁止する法律はありません
会社員の副業を一律に禁止する法律は、日本にはありません。日本国憲法第22条第1項は職業選択の自由を定めており、勤務時間外をどう使うかは本来、労働者の自由に委ねられるという考え方が基本にあります。
厚生労働省は「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を2018年に策定し、あわせてモデル就業規則から副業を一律に禁止する規定を削除しました。国としては、副業・兼業を認める方向で環境整備が進められています。
確認が必要なのは「法律」ではなく「就業規則」です
就業規則とは、労働時間や賃金、服務規律などの職場のルールを定めた文書で、常時10人以上の労働者を使用する事業場には作成と労働基準監督署への届出が義務づけられています(労働基準法第89条)。
副業を制限する規定は、この就業規則に置かれているのが一般的です。「許可制」「届出制」「原則禁止」など、会社によって扱いは大きく異なります。まずは自社の就業規則を開き、「副業」「兼業」「二重就労」といった語で確認してください。社内イントラネットで閲覧できない場合は、人事部門に問い合わせる方法があります。
なお、就業規則に違反した副業は懲戒処分の対象になり得ます。転職活動中に現職でトラブルを抱えると、活動そのものが不利になります。就業規則の確認は最優先にしてください。
両立が難しいと感じる3つの理由
転職活動と副業の両立が難しくなる原因は、次の3つに集約されます。
- 時間の不足:本業、副業、転職活動の3つが重なると、書類作成や企業研究に充てる時間が確保できなくなる
- 体力と気力の消耗:面接の緊張と副業の納期が同じ週に重なると、疲労が抜けないまま次の選考を迎えることになる
- 集中力の分散:両方を全力でこなそうとするほど、どちらの準備も中途半端になりやすい
いずれも、事前にスケジュールを組み、優先順位を決めておくことで大きく軽減できます。逆にいえば、計画を立てないまま走り出すと両立は高い確率で破綻します。
転職活動中に副業を続けるメリット・デメリット

副業を続けるべきかどうかは、感覚ではなく利点と負担を並べて判断します。
副業を続ける5つのメリット
- 収入が安定する:転職活動が長引いても副業収入があれば、生活の不安から焦って内定を承諾する事態を避けられる
- 選考のアピール材料になる:副業で得たスキルと実績は、職務経歴書や面接で具体的な根拠として示せる
- 精神的な余裕が生まれる:収入の柱が複数あることで、条件の合わない企業に無理に妥協せずに済む
- キャリアの選択肢が広がる:副業で経験した業務が、応募する職種の幅を広げることがある
- 自分の市場価値を確認できる:社外で報酬を得られる仕事は、自分のスキルが社外でどう評価されるかを測る材料になる
副業を続ける4つのデメリット
- 転職活動の準備時間が削られる:書類作成、企業研究、面接対策に充てる時間が不足しやすい
- 心身の負担が大きい:本業と副業に加えて選考が重なる時期は、疲労が蓄積しやすい
- 応募先によっては不利に働く:副業を認めていない企業では、入社後に副業を続ける前提だと調整が必要になる
- 税務手続きの手間が増える:一定額を超える所得があれば、自分で確定申告を行う必要がある
続けるか一時的に止めるかの判断基準
状況別の目安は次のとおりです。自分がどの行に当てはまるかを確認してください。
| 状況 | 続けやすい | 一時的に止めた方がよい |
|---|---|---|
| 転職活動の段階 | 情報収集・応募準備の段階 | 複数社の面接や最終面接が重なる時期 |
| 副業の納期 | 自分で調整できる継続案件 | 短納期で締切が動かせない案件 |
| 現職の就業規則 | 届出制・許可制で承認済み | 原則禁止で承認を得ていない |
| 副業の内容 | 応募先の職種と関連があり実績になる | 応募先と競合する事業や取引先が関わる |
| 体調と睡眠 | 睡眠時間を確保できている | 睡眠不足や体調不良が続いている |
迷う場合は「一時的に量を減らす」という中間の選択肢があります。完全にやめる必要はなく、山場だけペースを落とす方法が現実的です。
転職活動と副業を両立させる5つのコツ

両立の成否を分けるのは、意志の強さではなく仕組みです。今日から実行できる5つの方法を解説します。
コツ1:転職活動を副業より優先する順位を決める
最初に決めるのは、転職活動と副業のどちらを優先するかという順位です。両方を同じ重さで扱うと、締切のある副業が常に優先され、転職活動が後回しになります。
具体的には、先に転職活動の予定をカレンダーに入れ、残った時間に副業を割り当てます。「副業の納期があって面接の準備ができなかった」という状況は、選考の結果に直結します。副業のクライアントには「転職活動のため一時的に受注量を減らしたい」と早めに伝えておくと、納期の調整がしやすくなります。
コツ2:週単位でスケジュールを見える化する
両立できる人とできない人の差は、スケジュール管理の精度に表れます。週の初めに翌週の予定をすべて書き出し、時間を区切ってください。時間帯の割り振り方の一例は次のとおりです。
- 平日の朝(30分〜1時間):書類の修正、企業研究、エージェントへの返信
- 平日の夜(1〜2時間):副業の作業
- 土日のいずれか半日:面接対策、自己分析、副業の集中作業
カレンダーアプリでも手帳でも、自分が続けやすいツールで構いません。転職活動の予定と副業の作業時間を色で分けると、どちらに偏っているかを一目で確認できます。活動が長引いてきたと感じたら、まず副業側の作業時間を削るのではなく、週の総稼働時間そのものを見直してください。
コツ3:転職活動の山場に合わせて受注量を調整する
転職活動には負荷が集中する時期があります。応募が続く時期、複数社の面接が重なる時期、最終面接と条件交渉の時期です。この山場に副業の作業量が重なると、両方の質が下がります。段階に応じた調整の目安は次のとおりです。
- 応募準備期:副業は通常どおり進めながら、書類の作成と企業研究を並行する
- 書類選考から一次面接:副業の受注量を抑え、面接の日程調整に対応できる余裕を残す
- 最終面接から条件交渉:受注量を大きく絞り、企業研究と条件の整理に時間を充てる
- 内定承諾後:入社準備と並行しながら、副業の量を段階的に戻す
受注量を減らすことに引け目を感じる必要はありません。転職は数年単位のキャリアを左右する判断であり、短期間ペースを落とす選択には合理性があります。
コツ4:副業の経験を選考の材料として使う
副業は隠すべきものではなく、選考で示せる実績です。特に、応募先の職種と関連する副業は、実務経験の裏づけとして機能します。
- Webライティング・ブログ運営:文章力、情報収集力、検索エンジンへの理解を示せる
- プログラミング・Web制作:成果物そのものが技術力の証明になる
- コンサルティング・コーチング:課題整理の力と対人スキルを示せる
- 動画編集・デザイン:制作物をポートフォリオとして提出できる
- 物販・EC運営:仕入れ、在庫管理、数値分析の経験を示せる
制作物が残る副業は、提出できる形にまとめておくと説明が短く済みます。ただし、契約で公開が制限されている成果物は許可を得てから提出してください。
コツ5:睡眠と休養日を先に確保する
両立で最も軽視されやすいのが、睡眠と休養です。体調を崩せば転職活動そのものが中断し、結果的に活動期間が延びます。次の4点は、予定を組む前に確保しておく項目として扱ってください。
- 睡眠時間を先にブロックする:睡眠不足は判断力と集中力を下げ、面接の受け答えにも影響する
- 週に1日は完全な休養日を設ける:副業も転職活動も行わない日をあらかじめ決めておく
- 軽い運動を習慣にする:散歩程度でも気分の切り替えに役立つ
- 誰かに状況を話す:家族や友人に活動状況を話すだけでも、抱え込みを防げる
転職活動中の副業で押さえるべき注意点5つ

副業を続ける前に確認すべき点は5つあります。いずれも、知らないまま進めるとトラブルにつながる項目です。
注意点1:現職の就業規則を確認する
副業を始める前、または続ける前に、現職の就業規則で副業の扱いを確認してください。許可制であれば所定の手続きを踏み、原則禁止であれば無断で続けるリスクを理解したうえで判断する必要があります。厚生労働省が副業を認める方向のガイドラインを示していることと、個々の会社が副業を認めていることは別の問題です。国の方針を根拠に「問題ないはずだ」と自己判断するのは避けてください。
注意点2:副業が会社に知られる主な経路は住民税
副業が勤務先に知られる経路として多いのが、住民税の金額です。住民税は前年の所得をもとに計算され、会社員の場合は給与から天引きされる特別徴収が原則です。副業の所得が加算されると住民税額が上がり、給与額と釣り合わない金額として気づかれることがあります。
申告の際に副業分を自分で納付する普通徴収を選択できる場合もありますが、所得の種類や自治体の運用によって取り扱いは異なります。選択できるかどうかは、市区町村の住民税担当窓口で確認してください。
在職中の転職活動そのものを知られたくない場合の進め方は「転職活動が会社にバレない5つの方法」で解説しています。
注意点3:確定申告の基準は「収入」ではなく「所得」
給与を1か所から受けている会社員は、給与所得と退職所得以外の所得の合計額が20万円を超える場合、所得税の確定申告が必要です(国税庁)。基準になるのは売上そのものではなく、売上から必要経費を差し引いた「所得」です。
確定申告とは、1年間の所得と納める税額を自分で計算し、税務署に申告して納税する手続きのことです。申告と納税の期間は、原則として翌年2月16日から3月15日までです。
注意したいのは、この20万円の基準が所得税に限られる点です。住民税にはこの取り扱いがないため、所得が20万円以下でも市区町村への住民税の申告が必要になる場合があります。判断に迷う場合は、税務署または市区町村の窓口に確認してください。
なお、転職した年は前職の源泉徴収票を新しい勤務先に提出し、年末調整を受ける流れになります。退職から入社までに必要な手続き全体は「転職・退職手続きの流れ7ステップ」で確認できます。
注意点4:雇用契約の副業は労働時間が通算される
副業の契約形態によって、適用されるルールが変わります。アルバイトのように雇用契約を結ぶ副業では、労働時間は事業場が異なる場合でも通算されます(労働基準法第38条第1項)。長時間労働につながりやすく、割増賃金の取り扱いも問題になり得ます。
一方、業務委託契約の副業は労働時間の通算の対象になりません。ただし、自分で稼働時間を管理しなければ働きすぎになりやすい点は変わりません。自分の副業がどちらの契約なのかを、契約書で確認してください。
注意点5:競業と情報漏えいのリスクを避ける
現職と競合する事業を副業として行うことや、業務で知り得た情報を副業に使うことは、就業規則違反や法的な責任につながる可能性があります。取引先の情報や社内資料の転用は、退職後であっても問題になります。
厚生労働省のガイドラインでも、企業が副業を制限できる場合として、業務上の秘密が漏えいする場合や、競業により自社の利益が害される場合が挙げられています。副業が現職と近い領域にある場合は、特に慎重に判断してください。
副業の経験を職務経歴書・面接で伝える方法

副業の経験は、書き方と伝え方によって評価が変わります。作業内容の羅列ではなく、成果が伝わる形にまとめてください。
職務経歴書には成果を数字で書く
職務経歴書に副業の実績を書く際は、「何をしたか」ではなく「どんな成果を出したか」を数字で示します。月間の納品本数のように、規模と継続期間がわかる指標を添える形です。
数字を書く際は、実際の実績のみを記載してください。誇張した数値は面接の深掘りで確認され、かえって評価を下げます。
面接で聞かれたときの答え方
面接で副業について聞かれた場合は、事実を伝えたうえで、入社後にどうするつもりかまでセットで答えます。採用担当者が確認したいのは、副業の存在そのものではなく、本業に支障が出ないか、情報管理に問題がないかという点だからです。
答え方の要素は次の3つです。
- 何をどの程度の稼働で行っているか(事実)
- 本業や選考に支障が出ていない理由(管理方法)
- 入社後に継続したいのか、整理する意向なのか(今後の方針)
継続を希望する場合は、収入目的かスキル維持かといった理由も添えてください。
あえて伝えなくてよいケース
一方で、聞かれてもいない段階から副業を詳細に説明する必要はありません。応募先の職種と関連が薄く、実績としてアピールできない副業であれば、話題の中心にしなくて構いません。ただし、入社後も続ける予定がある副業は、内定後の段階で必ず申告してください。入社後に発覚した場合、就業規則違反として扱われる可能性があります。
副業OKの企業の探し方と確認手順

副業を続けたまま転職したい場合は、応募前の段階で企業の方針を確認します。入社後に調整するより確実だからです。
求人票で確認するポイント
求人票や採用ページに「副業可」「兼業可」と明記されている企業は、制度として認めている可能性が高いといえます。記載がない場合は、禁止されているとは限らず、単に記載していないだけのこともあります。
確認の手段は次のとおりです。
- 求人票と採用ページの記載を確認する
- 転職エージェント経由の応募であれば、担当者から企業に確認してもらう
- 面接の質疑応答の場で、会社の方針として質問する
- 社員の口コミが掲載されているサービスで、副業に関する記述を探す
求人票の読み方全般については「転職求人票の見方完全ガイド」もあわせて確認してください。
業界・企業規模による傾向の違い
副業への姿勢は、業界や企業規模によって傾向が分かれます。IT企業やスタートアップでは認めている例が比較的多く、金融機関や一部の大企業では情報管理の観点から制限が厳しい場合があります。ただし、これはあくまで傾向です。同じ業界でも企業ごとに方針は異なるため、業界のイメージで判断せず応募先ごとに確認してください。
内定後・入社前に必ず確認すること
内定を得た段階では、次の3点を書面で確認します。口頭の「大丈夫です」だけでは、担当者が変わったときに確認できなくなるためです。
- 副業が許可制か届出制か、必要な手続きは何か
- 制限される副業の範囲(競業、同業他社、勤務時間中の作業など)
- 副業を行う場合に会社へ報告する内容と頻度
副業を続けながらの転職に迷ったら無料で相談できます

副業を続けたまま転職したい場合、判断に必要な情報は求人票だけでは足りません。企業の副業に対する運用実態、面接での伝え方、内定後に確認すべき項目など、個別の状況によって答えが変わるためです。
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まとめ:転職活動中の副業は「隠さず、優先順位をつけて」続ける

転職活動中に副業を続けることは、法律上の問題ではなく、就業規則と時間配分の問題です。要点を整理します。
- 副業を一律に禁止する法律はなく、確認すべきは現職の就業規則と副業先との契約内容
- 転職活動と副業では転職活動を優先し、山場の時期は副業の受注量を意図的に絞る
- 副業の経験は隠すのではなく、成果を数字で示して選考の材料に使う
- 給与所得と退職所得以外の所得が20万円を超える場合は所得税の確定申告が必要(国税庁)。住民税は別の取り扱いになる
- 転職先の副業の方針は、求人票、エージェント、面接、内定後の書面確認の順に、複数の手段で確かめる
隠して進めるのではなく、順序を決めて正しく伝えることが、入社後のトラブルを防ぐ最も確実な方法です。
転職活動中の副業に関するよくある質問
転職活動中に副業をしていると選考で不利になりますか?
副業をしていること自体が不利になるとは限りません。採用担当者が確認するのは、本業や入社後の業務に支障が出ないか、情報管理に問題がないかという点です。応募先の職種と関連する副業であれば、実務経験として評価される場合もあります。
面接で副業をしていることを聞かれたら答えるべきですか?
聞かれた場合は、事実を伝えてください。副業の内容と稼働時間、入社後に継続する意向があるかどうかまで答えると、企業側も判断しやすくなります。虚偽の回答は、入社後に発覚した際に就業規則違反として扱われる可能性があります。
副業をしていることは現職の会社に必ずバレますか?
必ず知られるわけではありませんが、住民税の金額から気づかれる場合があります。住民税は前年の所得をもとに計算され、給与から天引きされる特別徴収が原則のためです。副業分を自分で納付する普通徴収を選べるかどうかは、所得の種類と自治体の運用によって異なります。
副業の所得が20万円以下なら何も申告しなくてよいですか?
所得税の確定申告は不要となる場合がありますが、住民税の申告は別です。給与所得と退職所得以外の所得が20万円を超える場合に所得税の確定申告が必要という基準(国税庁)は、住民税には適用されません。所得が20万円以下でも、市区町村への住民税の申告が必要になる場合があります。
内定後に副業を続けたいと伝えるタイミングはいつですか?
内定承諾の前が適切です。労働条件を確認する段階で、副業の可否と必要な手続きをあわせて確認してください。承諾後や入社後に伝えると、条件の再調整が必要になり、双方にとって負担が大きくなります。
転職活動中は副業を一度やめたほうがよいですか?
一律にやめる必要はありません。判断の目安は、転職活動の段階と副業の納期の性質です。複数社の面接が重なる時期や、最終面接と条件交渉の時期は、受注量を絞って転職活動に時間を充てるほうが結果につながりやすくなります。
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